Research Abstract |
今年度は,昨年度に引き続き2011年東北地方太平洋沖地震に伴う地震波速度変化について調査した,2011年東北地方太平洋沖地震は,稠密な観測網が存在する中で起きた巨大地震であり,大地震に伴う地震波速度変化を調べる上で非常に重要である.今年度は,特に,これまでの常時微動解析とコーダ波を用いた解析の他に,相似地震を解析に利用し,地震波速度構造の変化の検出を行った.相似地震は,プレート境界の同一位置で繰り返し発生し,同一観測点では非常に類似した波形が観測されるため,地下構造の変化を推定するのに有用である.本研究では,クロススペクトル法を用いて,2003年から2011年12月までに発生した相似地震ペアの走時差を精密に測定した.その結果,2011年東北地方太平洋沖地震を挟んで発生した相似地震ペアでは,地震前に比べて地震後に走時が明瞭に遅れることがわかった.S波の走時遅れは0.01秒程度であり,岩手県北部から茨城県北部にかけての東北地方の広範囲に分布する.また,P波の走時差は,S波に比べて1/2から1/3程度と小さい.観測された走時差には,発震時刻の推定誤差・地殻変動による震源と観測点間の距離変化・震源位置の変化が誤差要因として含まれると考えられるため,その評価を行った.これらの誤差を考慮しても,陸側プレートの地殻内で地震波速度が低下していることが見出された.これまでの常時微動やKiK-net鉛直アレイデータに地震波干渉法を適用した解析結果に加え,別のデータである相似地震を用いて地震波速度変化を検出したことは,大地震に伴う地震は速度変化の全体像を理解する上で重要な成果である.
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた常時微動・KiK-net鉛直アレイ・相似地震を用いた解析結果を統合し,地震波速度変化の深さ分布の理解を目指す.その際,表面波の周波数依存性は,地震波速度変化の深さ分布の推定に有用であるため,常時微動の地震波干渉法解析を用いて,大地震に伴う表面波速度変化の周波数依存性を調査する.
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