2011 Fiscal Year Annual Research Report
造礁サンゴミドリイシ属の緯度傾斜に沿った適応的分化パターンの解明
Project/Area Number |
11J03236
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
井口 亮 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 緯度傾斜 / サンゴ / 適応的分化 / 褐虫藻 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本沿岸の緯度傾斜に沿ったサンゴの適応的分化パターンを解明することである。研究開始となる初年度は、千葉県館山、高知県土佐清水、熊本県天草、沖縄島、宮古島、西表島にてフィールド調査を行い、対象種の分布調査とサンプリングを行った。場所ごとに差異はあるものの、集団遺伝学的解析に使えるサンプル数は十分に確保できた。これらのサンプルを一部、ミトコンドリア調節領域を用いた集団遺伝学的解析を行ったところ、種子島より北の暖温帯海域と、それ以南の熱帯海域で有意な遺伝的分化が見られた。また、核のITS領域を用いて褐虫藻の遺伝子型分布パターンを調べたところ、暖温帯海域と熱帯海域の間で、褐虫藻の遺伝子型組成が大きく異なることが分かった。これは暖温帯海域に生息しているサンゴが、熱帯海域の褐虫藻とは生理的形質の異なる褐虫藻を獲得して暖温帯海域に進出できた可能性を示唆しているが、ホスト側のサンゴの遺伝的変異も確認できたので、サンゴ-褐虫藻共生体そのものがどのように遺伝的に分化して暖温帯海域に進出できたのか、今後更なる調査が必要である。また、琉球列島周辺で普通に見られるコユビミドリイシ20群体を用いた共通環境実験を行った結果、遺伝子型の違いによって、成長や高温ストレス耐性が大きく異なることを突き止めた。また、サンゴの遺伝子データベースを用いたバイオインフォマティクス的手法により、サンゴの加速進化遺伝子を複数発見し、論文として出版した(Iguchi et al.2011)。これらの加速進化遺伝子の一部からプライマーを作成し、一部の組み合わせでは多くのサンプルでPCR伸長を確認できたことから、これらの遺伝子領域をマーカーとし、集団遺伝学的解析を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度は、基本サンプリングと遺伝子解析の予備実験を中心に進める予定であったが、サンプリングが順調に進んだことに加えて、遺伝子解析もスムーズに進み、褐虫藻の遺伝子型分布にまで踏み込んだ研究成果を残すことができた。また飼育実験も順調に進んだことや、論文も一報出版できたことから、当初の予定以上に研究は進んだと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、まだサンプリングを終えていない和歌山県周辺の野外調査及びサンプリングを早めに実施し、そのサンプルも含んだ遺伝子解析を進め、ある程度まとまりそうな褐虫藻の遺伝子型分布に関する論文を出版することを目指す。また、サンゴ側の新しい遺伝子マーカーを複数開発したので、これらの遺伝子解析を着実に進めていく予定である。
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Research Products
(6 results)