2012 Fiscal Year Annual Research Report
造礁サンゴミドリイシ属の緯度傾斜に沿った適応的分化パターンの解明
Project/Area Number |
11J03236
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
井口 亮 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 緯度傾斜 / サンゴ / 適応的分化 / 共通環境実験 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本のサンゴ集団を対象に、日本沿岸の緯度傾斜に沿った環境変化に対して、サンゴがどのような適応的分化パターンを示すのかを解明することである。2年度目は、前年度に引き続きサンプリングと野外調査を進め、主にクシハダミドリイシとコユピミドリイシを対象に、遺伝子解析に必要な十分量のサンプルを確保することができた。 上記及び昨年度の野外調査で採集したサンプルから、DNA抽出を行った。抽出したDNAを用いて、申請者らが発見した加速進化遺伝子複数から、プライマーを作成し、塩基配列取得を進めた。特に、糖鎖を認識し、結合することで知られるレクチン遺伝子である、CEL-III lectinとTachylectinの塩基配列取得を、現在保有しているコユビミドリイシのDNAサンプルから幅広く行った、どちらの遺伝子においても、多くのアリルが確認された。 また、昨年度、共通環境実験に用いたコユビミドリイシ20群体を用いて、瀬底研究施設での屋外水槽にて、半年間に渡る共通環境実験を行った。その結果、全ての群体において、水温低Fとともに、石灰化率と光合成活性が低下することが分かった,,また、石灰化率の低下パターンは、群体間、すなわち遺伝子型間で著しく異なることが確認された。光合成活性も、水温の低下とともに低下することが確認されたが、石灰化率の低下ほどは、群体間で目立ったパターンは見られなかった。また、月毎の平均気温と石灰化率、光合成活性をプロットして回帰分析を行い、石灰化率が0に近くなる水温は、12℃から20℃の間にあること、また、光合成の最適水温は、25℃から27℃辺りにあることが推定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年度目は、サンプリングに関しては、琉球列島側のサンプリングはほぼ全て終了することができた。遺伝子解析に関しては、加速進化遺伝子の一部をマーカーとして、遺伝子データの取得を順調に進めることができた。アウトプットに関しては、国際誌1本に加え、和文総説も1本公刊することができた。そして日本生態学会での企画集会の共同企画・開催、また、招待講演や国際学会での発表も複数行ったことから、順調に研究が進展したものと評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方針としては、天候不良のため、昨年度サンプリングを実施できなかった和歌山県周辺の野外調査及びサンプリングを早めに実施する。遺伝子解析に関しては、十分な変異を持つマーカーを確立できたので、今後塩基配列取得をさらに進め、取得できたアリルのデータを頻度データとしてまとめ、緯度と相関があるかどうかを調べる。それと平行して、ゲノムレベルでの遺伝的変異と緯度との相関があるのかをより網羅的に調べるために、RAD法による集団ゲノム解析を実施することも試みる。また、これまでの飼育実験によって、対象種の1つであるコユビミドリイシの環境応答の閾値を推定できたので、琉球列島周辺の環境データと照らし合わせ、コユビミドリイシの適応的分化が起こりうる野外での条件の推定を試みる。また、これまで得られた成果を投稿論文としてまとめ、国際誌に投稿することも進める。
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Research Products
(12 results)