2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J03243
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
中川 草 国立遺伝学研究所, 生命情報・DDBJ研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 比較ゲノム / 蛋白質翻訳機構 / 生命情報学 / 分子進化 / データベース |
Research Abstract |
(1)非Shine-Dalgarno型の翻訳開始メカニズムについて 私たちは蛋白質の翻訳開始メカニズムはダイナミックに進化していることを報告した(Nakagawa et al.2010 PNAS)。その結果、原核生物(真正細菌と古細菌)ではShine-Dalgarno(SD)配列を介した翻訳開始メカニズムが一般的であると信じられていたが、いくつかの生物種であまり使用されていないことを明らかにした。しかし、SD配列を用いていない翻訳開始メカニズムについてはまだ明らかになっていない部分が多い。そこで私たちはSD配列をもたない遺伝子配列を277種の原核生物のゲノム配列を元に、開始コドン周辺の配列の塩基バイアスを計算し、それぞれを比較解析した。その結果、いくつか代表的な塩基バイアスが確認された。そのような塩基バイアスは生物種の系統、特に真正細菌と古細菌によって大きく異なり、翻訳開始メカニズムが多様であることをより強く示唆していると考えられる。そして現在上記の結果をまとめて投稿準備中である(Nakagawa S.,Niimura,Y.,Miura,K.,and Gojobori T. in preparation) (2)真核生物種を対象とした開始コドンの探索プログラムについての研究開発 様々な生物種の開始コドン周辺のシグナル配列を同定するために、ゲノム配列が解読されていて、かつ進化的に特徴的な生物種について(Metazoansから9種、Fungiから26種、Plantsから10種、Protistsから24種)、ゲノム配列から遺伝子配列、遺伝子の位置と開始コドン周辺の配列を収集した。遺伝子のオルソログ関係、機能、遺伝子周辺のGC含量、Gene Expression Omnibusのマイクロアレイ発現データなどを元に、遺伝子をグループ化して、それぞれ開始コドン周辺のシグナル配列をグループごとに比較した。結果として、真核生物ではGC型の翻訳開始シグナル(GCCGCCaug、augは開始コドン)をもつ場合とA型のシグナル(AAAAAAaug)で遺伝子機能等に有意な差があることが分かった(現在詳細を調べている)。そして開始コドンの予測に使用するためのアルゴリズムの開発のために、進化遺伝生物学やバイオインフォマティクスの研究で著名なハーバード大学のDaniel L.Hartl研究室に8月15日から滞在し、開発を現在進めている。また、インターネット上での開始コドン探索用のサービス提供のための基盤として、サーバー等を整えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
蛋白質の翻訳開始制御機構について、真正細菌と古細菌は同じ原核生物ということもあり、メカニズムは同じであるという一般的な認識があったが、現在までの結果からその一般の常識とは異なる見解を得たと考えている。それら結果を学会等でも発表していて、今年度には国際雑誌に掲載される予定である。また、ハーバード大学のDaniel Hartl教授の共同で翻訳開始コドンの発見のための新規のアルゴリズムの開発等に努めている。
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Strategy for Future Research Activity |
次世代シーケンサ等の発展により、ゲノム配列がますます解読されている。一方で、ゲノムのアノテーションのレベルはそれほどの進歩が見られない、むしろそれらがボトルネックとなっている。本研究において、それらのゲノムの開始コドン予測のために必要なアルゴリズムの開発をDaniel L. Hartl教授とともに行っていて、インターネットを介した開始コドン予測サービスが開始させられるように努める。
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