2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J03243
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
中川 草 国立遺伝学研究所, 生命情報研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2011 – 2013-03-31
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Keywords | 比較ゲノム / 蛋白質翻訳機構 / 生命情報学 / 分子進化 |
Research Abstract |
私たちは開始コドン上流に存在するShine-Dalgano(SD)配列を介した蛋白質の翻訳開始メカニズムはダイナミックに進化していることを2010年に報告した(Nakagawa et al. 2010 PNAS)。その結果、原核生物(真正細菌と古細菌)ではSD配列を介した翻訳開始メカニズムが一般的であると信じられていたが、いくつかの生物種であまり使用されていないことを明らかにした。しかし、SD配列を用いていない翻訳開始メカニズムについてはまだ明らかになっていない部分が多い。そこで私たちはSD配列をもたない遺伝子配列を277種の原核生物のゲノム配列を元に、SD配列を持たない開始コドン周辺の配列の塩基バイアスや自由エネルギーを計算し、生物種ごとに比較解析を行った。その結果、下記のメカニズムを介した翻訳開始機構が存在し、その使用比率は系統によって異なることが明らかになった:1)Leaderlessと呼ばれる5'非翻訳領域がほとんど存在せず70Sリボソーム複合体と直接相互作用、もしくはリボソーム蛋白質S1と相互作用を介したメカニズム、2)開始コドン周辺で二次構造を作らないようにすることにより開始コドンにアクセスしやすくするメカニズム、3)開始コドンの位置で16SrRNA末端と相互作用するメカニズム。そのような翻訳開始メカニズムが進化的にダイナミックに変化していることを明らかにした。 翻訳開始コドン予測のためのプログラム作成のためヒトとマウスを対象に、RNA-seqやChIP-seqなどのデータに加え、リボソームプロファイリング法によって特定された結合配列などのデータを収集し、一般的に知られている遺伝子構造との関係を現在解析中である。加えて現在まで明らかになったゲノム配列を元に、開始コドン周辺の塩基配列のバイアスなどの類似度を調べている。このようなデータを基にして、実験などのデータを基にした様々な生物種を対象とした遺伝子構造などを予測するwebサービスを開始するための基盤整備を行っている。
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