2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J03275
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
黒澤 裕之 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 光整流効果 / メタマテリアル / 光トルネード / 負の輻射力 |
Research Abstract |
今年度は、メタマテリアルで未だに実証されていない負の輻射力の観測を目指した。通常、光はその入射方向と順方向に輻射力を物質に与えるが、負の輻射力は逆方向に輻射力を与える。これまでに誘電率と透磁率が同時に負となる波長域では負の輻射力が実現し得ることが理論的、数値的に示されていた。本研究では、そのような性質を持つ代表的メタマテリアルであるダブルフィッシュネット構造(Double Fishnet Structure: DFS)を実際に作製し、その光学的評価を行った。本研究ではAl/TiO2/Alの三層膜を電子線描画と反応性イオンエッチングで微細加工した。資料作成は計画通り、物質材料研究機構で行った。実際に光学測定を行ったところ、数値計算と同様にメタマテリアル特有の磁気共鳴が生じる波長域で、透過率の増大、反射率の減少が観測された。これまでにAlを金属材料として用いたDFSは知られておらず、本研究で磁気共鳴を持ったDFSを作製する事ができた。また、DFSと並行して透磁率のみが負となり誘電率は正であるようなAlグレーティング/誘電率/金膜という層状構造について、金膜部分に掛かる光の輻射力を数値計算したところ、磁気共鳴が生じる低エネルギー側で光の輻射力が負となる事が分かった。これは負の輻射力において誘電率と透磁率が同時に負となる事が必須ではなく、磁気共鳴のみで負の輻射力が実現し得るという結果である。また、共鳴波長の前後で電磁場分布の対称性が異なっている事がわかり、電磁場の対称性と輻射力に相関があることが示唆された。また、本年度末に来年度研究する予定である光トルネード効果の予備的検討を行った。蜂の巣状に孔を空けた誘電体の孔の径を交互に変えた構造を石英基板と金薄膜からなる系と接合し、さらに二酸化チタンという代表的高屈折率誘電体でカバーした構造に、s偏光、入射角60°で光を照射したところ、光トルネード効果が発現している事が分かった。これは、金属系微細構造における光トルネード効果の最初の例といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度Al/TiO2/Alの三層膜ダブルフィッシュネット構造を作製する事ができ、実際に磁気共鳴が起こっている事が分かった。実際の起電力測定までは及ばなかったものの、その見通しは立っている。また、光の輻射力と構造に誘起される電磁場分布との関係が対称性という観点から議論できる事が示唆された事は特筆すべき進展である。本年度末に行った光トルネード効果の数値的検討では、金属系微細構造においても光トルネード効果が発生することが確認できた。構造のパラメータも現実的な値であり、来年度に向けた準備もできている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までに作製すべき構造が明らかになり、その構造パラメータも現実的である事が分かった。今後は実際のサンプル作製が重要であるが、これまで同様に高い微細加工技術を持つ物質材料研究機構と連携を図りながら研究を推進する。負の輻射力や光トルネード効果が微弱である事もあり得るが、今年度までにS/Nを改善するプログラムも作製済みであり、対応している。
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