2011 Fiscal Year Annual Research Report
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11J03283
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
熊谷 亘 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 量子仮説検定 / 量子ガウス状態 / Fisher計量 / 最小分散不偏推定量 / Hunt-Steinの定理 / Cramer-Rao不等式 / 複合仮説 |
Research Abstract |
本年度は量子ガウス状態に対する量子仮説検定問題を主に取り扱った。ここで量子ガウス状態とは、コヒーレント光にガウスノイズが加わった量子状態のことであり、平均パラメータおよび個数パラメータと呼ばれる二つのパラメータで指定される。また量子仮説検定とは、性質のわからない量子状態が与えられたとき、その量子状態がある条件をみたすか否かを統計学的に判定する方法である。 本研究では量子ガウス状態の平均パラメータおよび個数パラメータに対する様々な典型的条件に対し、未知の量子ガウス状態がその条件を満たすか否かを仮説検定の意味で最適に判別する方法を導出した。これらの証明において、対称性のある量子状態族に対して適用できる量子Hunt-Steinの定理と呼ばれる定理が援用された。また量子Fisher計量が定める量子Cramer-Rao不等式の下界を達成する不偏推定量(すなわち最小分散不偏推定量)の解析が重要な役割を果たした。 量子ガウス状態は正規分布の量子系へ拡張したものと考えられ、正規分布と類似の性質を多く備えている。特に量子ガウス状態は中心極限定理における極限的な量子状態として現れることが知られている。従って、量子系での統計学で量子ガウス状態がなす役割は、従来の統計学で正規分布がなす役割に相当することいえる。正規分布の重要性は周知の通りであるので、量子ガウス状態に対する統計的な解析も非常に重要なものであると考えられる。また量子系における仮説検定の研究はほとんどが単純仮説に対するものであるが、本研究は複合仮説を扱っている。本研究はこの点においても意義があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
量子状態に対する考察はおおむね上手くいっているが、量子通信路族に対するFisher計量の計算がうまくいかない。
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Strategy for Future Research Activity |
量子通信路族に対する解析、特にFisher計量の定義づけとその計算が課題として挙げられる。量子通信路の全体は量子状態の空間にアフィンに埋め込めることが知られているので量子通信路に対するFisher計量を計算するためには、量子状態族に対するFisher計量(もしくはもっと通信路の構造を反映した量)を計算すればよい可能性がある。また通信路族に対称性を仮定し、その対称性を援用してその計算が実行できるかどうかを考察する。
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