2011 Fiscal Year Annual Research Report
子のう菌類の分類体系再構築に対する無性世代形態からの新アプローチ
Project/Area Number |
11J03316
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
平山 和幸 岩手大学, 大学院・連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 子のう菌類 / 不完全菌類 / 分類学 / 分子系統学 / 進化 |
Research Abstract |
有性世代に基づく現行の菌類分類体系に,従来無視されてきた無性世代の形態形質情報を加え,両世代に基づく菌類分類体系の再構築を試みた.研究対象を子のう菌門,クロイボタケ綱に限定し,今年度は1.無性世代菌の収集および2.それらの塩基配列データ取得・分子系統樹の構築を行った.その結果,無性世代の特定の胞子形成様式,胞子形成細胞の数や胞子形態が、有性世代によって特徴づけられる一部の目や科に集中して分布する傾向が示唆された。 1.採集による新規試料の取得 青森県・沖縄県において無性世代菌の採集を行い,約200標本を新たに取得した.そのうち約100標本については純粋培養株も取得した.取得標本には新種・日本新産種が複数含まれていた. 2.塩基配列データの取得・分子系統樹の構築 上記の約100菌株について,リボソームDNAの2領域(18S,28S領域)の塩基配列を新たに取得し,分子系統樹を構築した.その結果,一部の系統において科レベルで胞子形成様式が共通する傾向が確認された(Montagnula科-アレウロ型,Pleospora科-ポロ型,Tetraplosphaeria科-出芽型).胞子形成細胞数に関して,Pleospora目では胞子形成細胞が一点のみの種が多く分布するのに対し,その他の目では胞子形成細胞を複数有する種が多く確認された.ただし,Plesopora目においても植物病原菌を多く含む系統においては胞子形成細胞を複数有する種が多い傾向が確認された.胞子形態に関して,Pleospora目では多細胞で比較的大型の胞子を少数形成する種が多数確認された.一方,その他の目では単細胞または二細胞で比較的小型の胞子を多量に形成する種が集中する傾向が見られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた試料の塩基配列データは概ね取得済みである.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は各試料の形態観察,特に無性世代菌の分類・同定上重要とされる「胞子形態」と「胞子形成様式」の観察を重点的に行う. 試料中に複数の未記載種も確認されているため,それらの新種記載も進める.
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