2011 Fiscal Year Annual Research Report
フラーレンのσ骨格変換反応による新規筒型π電子系化合物の合成と物性探索
Project/Area Number |
11J03384
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森中 裕太 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | フラーレン / π共役系 / 開口フラーレン / 有機薄膜太陽電池 / アクセプター材料 |
Research Abstract |
カーボンナノチューブの部分構造とも考えられる筒型のπ電子系化合物は、合成化学・材料化学・理論化学・超分子化学など、多方面から興味がもたれている。しかし、その合成は極めて困難であり、報告例は未だ数例に限られている。 一方、当研究室では、フラーレンの表面に最大16員環で構成される巨大な開口部を効率的に設ける手法を既に開発しており、最近では開口C60誘導体が有機薄膜太陽電池のアクセプター材料として有用であることを見出している。そこで、本研究ではこれまでの知見を基に、C60の2箇所に巨大な開口部を形成することで筒型のナノチューブ最小モデルを構築し、その構造と物性の相関を明らかにする。さらに、筒型π電子系化合物をゲストとして利用する超分子化学への応用や、有機薄膜太陽電池のアクセプター分子として展開することを目的としている。 筒型のπ電子系化合物の合成戦略として、まずピリダジンユニットを適切な長さのスペーサーで連結した分子を設計し、これを鋳型に用いてC60に位置選択的に開口部を形成させる。次いで、スペーサーを除去した後、酸化反応、硫黄挿入反応による開口部の拡大により、筒型のナノチューブ構造をもつ誘導体に導くことを考えた。 鋳型とするピリダジン誘導体の合成を目指し、ビフェニル構造をスペーサー部位にもつ誘導体を合成した。すなわち、市販の出発原料とジクロロピリダジンとの根岸クロスカップリング反応を鍵として、非対称なピリダジン誘導体を合成した後、系中で発生させた酸ハロゲン化物との反応によってスペーサーを導入した。しかし、この鍵化合物は極めて剛直な分子であることから、一般的な有機溶媒に対して不溶で、C60との反応の解析は困難であると予想された。そこで、反応の位置選択性を保証した上で、適度な柔軟性をもつと予想されるフェニレン構造をスペーサーとする誘導体を合成したところ、クロロホルムなどの溶媒に可溶であることがわかった。今後は、この誘導体とC60の反応を実際に検討し、筒型π電子系化合物の合成を達成したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の鍵化合物であるスペーサーを有する分子の合成を達成したため、おおむね順調に進展していると考える。途中、合成した分子の溶解性が予想以上に悪いという問題があったが、様々なスペーサーに対するスクリーニングを、理論計算を用いて迅速に行い、すぐに溶解性と反応の位置選択性を兼ね備えたスペーサーを導き出した上で実際に合成を達成している。今後は、設計し直した分子を用いた反応を行う事で、目的である筒型の構造をもつ分子の合成が達成できると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の最初の取り組みとしては、合成した誘導体を用いて、C60に位置選択的に開口部を形成させる検討である。その際、高温での反応のため、期待される位置選択性が達成されているかを慎重に検討する必要がある。一方、単離した化合物の構造決定は、位置選択的に反応を達成したことを証明するために特に力を入れて達成したいと考えている。
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Research Products
(3 results)