2011 Fiscal Year Annual Research Report
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11J03388
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西中 瑶子 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 一重項酸素 / 活性酸素 / 神経細胞 / グルタミン酸 / 神経変性 / 皮膚細胞 / 好中球 / NETs |
Research Abstract |
まず、新たに合成した化合物の活性酸素消去能の検討を行った。ヒト好中球を分離収集し、ホルボルミリステートアセテート(PMA)で刺激し、産生された活性酸素の消去能を種別に測定した。その結果、一重項酸素、スーパーオキシド及び次亜塩素酸と反応することがわかった。ただ、化合物自体の構造決定は出来ていない。 次に、ラットの初代培養神経細胞を用いて、虚血再灌流傷害モデル構築の前段階として、神経細胞に変性をもたらすことが知られているグルタミン酸による傷害モデルを構築した。そして、神経細胞死の検出を試みたが、この系では神経細胞はアポトーシスやネクローシス等の細胞死ではなく、変性を起こすため、その検出が困難であった。 さらに、ヒト角化上皮細胞の初代培養ならびに放射線照射による細胞傷害モデルを確立した。計画書では長波長紫外線による傷害を予定していたが、昨年の原発事故を受けて、電離作用によりDNAに傷害を与える、という同様の傷害機序を持つ放射線障害についても合わせて検討することを考えたためである。 最後に、一重項酸素の生体内での役割を探るため、好中球の新たな殺菌機構として近年注目を集めているNeutrophil Extracellular Traps(NETs)との関係を調べた。NETsは、自らのDNAを細胞外へと放出し、貧食することなく殺菌を行う反面、細胞外に放出されたDNAが自己免疫性疾患の原因となっている可能性も考えられるようになっている。その形成には活性酸素が関与していると言われているが、どの活性酸素種が関与しているかは不明であった。そこで我々は、PMAによって誘導されたNETsが重項酸素消去剤によって抑制され、活性酸素産生能が欠損している慢性肉芽腫症患者好中球においても一重項酸素の負荷によりNETsが形成されたことから、一重項酸素がNETs形成に必要であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たに合成した化合物の構造決定に予想以上に苦戦していること、神経細胞変性の検出、評価が困難であり、結果を出すに至らなかったことは計画よりも遅れている。しかし、一重項酸素の生体防御への関与を検討した好中球NETsの研究については大きな成果が得られた。また、平成24年度に入ってから行う予定であった皮膚細胞の実験系を早期に立ち上げたことで、平成24年度には全ての計画を終えられると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
神経細胞変性の検出については、細胞死を検出することは困難なので、発想を転換し、神経細胞の活性の変化を検出することによる評価に代えることとした。具体的な方法としては、MTT法やAlamar Blue法などがあり、これらの手法は習熟しているため実現可能だと考える。 次に、皮膚細胞傷害モデルでの一重項酸素の細胞傷害機序を検討することに関しては、UV-A照射による細胞傷害だけではなく、放射線照射による細胞傷害モデルを取り入れることを考えている。これは、上述の通りすでに傷害モデルの確立に成功した。今後はサイトカインの検出、シグナル伝達経路の同定、さらにはDNA損傷という観点からも評価を行いたいと考えている。
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Research Products
(7 results)