2011 Fiscal Year Annual Research Report
近赤外高分散エシェル分光器の開発による木星熱圏ダイナミクスの観測的研究
Project/Area Number |
11J03411
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宇野 健 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 赤外観測 / 木星 / オーロラ / 分光 / 熱圏 |
Research Abstract |
本研究は、1.木星極域熱圏ダイナミクス、すなわちオーロラ発光、温度、速度の空間構造と長期にわたる変動の描像を得ること、2.H2とH3+の発光分布が異なる原因を明らかにすること、さらに3.木星MIT結合系の時間変動、経度変化の解明を目的としている。 本年度は、より運用性を高めるための回折格子駆動機構を分光器の設計に追加し、コスト削減のために設計の一部変更を行った。回折格子駆動機構を新たに作成し、この安定性試験を実施し、目標とする安定精度を得られていることを確認した。 本年度はまた、NASA IRTF/CSHELLを利用した電離圏プラズマ速度観測および、国立天文台Subaru/IRCSによる熱圏温度場観測を実施した。特にSubaru/IRCSでは、H2とH3+それぞれについて、複数の輝線を同時に捉え、その強度比から木星熱圏の温度導出を行なった。また、新たな展望として、Subaru/IRCSに新たに取り付けられた補償光学を用いて、地球大気のゆらぎを補正し、望遠鏡の回折限界に迫る高い空間分解能のオーロラ観測を実施した。高い空間分解能でオーロラ発光高度を直接観測することにより、H2とH3+の発光分布の違いについてさらに理解が深まった。観測で得られた温度分布と、申請者の所属するグループで開発が進められたMIT結合モデル結果との比較を行った結果、粒子降り込みが活発な領域と、加熱が活発な領域とが異なることが示唆された。 これらの観測で得られた木星オーロラ帯の描像を国内外の学会発表を通して公表し、国内外の研究者と議論を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分光器開発は、設計の一部変更により当初予定よりやや遅れているものの、公開望遠鏡による熱圏観測は順調に進展しており、特にSubaru/IRCSでは、補償光学装置を用いた高空間分解能のオーロラ観測を実施し、惑星観測の新しい展望を切り拓いた。
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Strategy for Future Research Activity |
設計の一部変更により分光器開発が当初予定よりやや遅れているため、本年度の前半は分光器開発に注力する。2012年は11月末が木星の衝であり、その前後で集中的に観測を行なう。これらの成果を国内外の学会発表を通して公表する。観測、モデル、理論研究者との幅広い議論を通して研究の完成度を高め、木星の磁気圏-電離圏-熱圏結合に伴うエネルギー、運動量輸送の空間分布と時間変化、およびその変動メカニズムを解明する。これらの成果を木星オーロラ帯変動の描像として論文にまとめ、博士論文として発表するとともに、国際専門誌へ投稿する。
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