2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J03417
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
宮田 康平 北海道大学, 大学院・総合化学院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 希土類 / 錯体 / 発光 / ホスフィンオキシド / 配位構造 / 配位高分子 |
Research Abstract |
発光性希土類錯体は可視および近赤外域においてf軌道に基づく色純度の高い発光を示すことから、ディスプレイ用発光材料やレーザー材料として研究されている。これまで私は、適切な配位子設計により希土類錯体からの世界最高クラスの発光効率を報告してきた。これらの発光特性は、通常溶液中における光学計測により評価される。しかし、実際の発光デバイス材料への応用を考えると固体状態における光物性評価が重要になるが、バルク結晶のままでは結晶表面で光散乱が起こるため励起光が内部まで到達せず、正確な光物性評価を行うことは困難であった。そこで本研究では、自己集積が可能な新しい希土類錯体を設計・合成し、紫外光が散乱しない100nm以下の結晶を調製する。得られた希土類ナノ結晶の光物性を評価することで、結晶中における発光特性解明および発光性有機材料としての機能評価を行うことを目的とした。 今年度は、自己組織型Eu(III)錯体の合成について検討した。その結果、3種類の新規Eu(III)配位高分子の合成に成功した。これらの配位高分子についてX線結晶構造解析を行ったところ、2つのEu(III)イオンをホスフィンオキシド配位子が架橋した一次元の配位高分子構造を形成していることが明らかとなった。熱重量分析の結果、従来のEu(III)錯体の分解温度は230℃であったのに対し、この配位高分子の分解温度は約300℃と見積もられ、高い構造安定性を持っていることがわかった。発光スペクトルおよび発光寿命測定から発光量子収率を見積もったところ、83%と高い値を示した。このことから、配位高分子を形成することにより高い熱耐久性と強発光特性を同時に実現した。本検討により、これらの配位高分子は光機能性材料として優れた性能を有していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度行った研究の結果、発光特性と耐熱性の両方に優れた発光体の開発に成功した。本研究成果は論文掲載され(下記3件)、特許出願を行った(下記1件)。さらに今年2月にはNHKの取材を受け、新しい発光体として全国各地に報道されただけでなく、北海道新聞(2/29)や日刊工業新聞(2/28)にも関連記事が掲載された。以上より、本研究は順調に進展しており、学術界のみならず産業界にも大きなインパクトを与えたものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、再沈殿法による希土類錯体ナノ結晶合成の検討を行う。様々な反応溶媒(良溶媒・貧溶媒)、サンプル濃度、時間、表面修飾剤などを検討することによって反応条件の最適化を行ない、粒子サイズの制御を目指す。得られた希土類錯体ナノ結晶は、XRD、TEM、DLS測定装置によって構造同定を行う。光物性評価としては、発光スペクトル、発光量子効率、発光寿命を測定する。これらの希土類錯体ナノ結晶分散溶液の測定結果と、有機媒体に均一に溶解させた希土類錯体の結果とを比較し、結晶中における発光過程の相違を明らかにする。これらの研究成果を国内および国際会議などにおいて発表する他、学術論文誌へ投稿する。
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