2011 Fiscal Year Annual Research Report
新しいX線光電子分光理論によるプラズモン励起機構の解明
Project/Area Number |
11J03465
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
風間 美里 千葉大学, 大学院・融合科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 光電子分光 / プラズモン / 光電子回折 / 弾性散乱 |
Research Abstract |
プラズマ振動の量子であるプラズモンが固体中で発生する前後の物理過程を理解することを目的とし、X線光電子スペクトルを記述する新しい理論「量子ランダウ公式」のコード化および作成したプログラムを用いた1次プラズモンロススペクトルの計算を行った。本研究で用いる理論の画期的な点は、(1)従来の理論で計算を単純にするために入れられていた光電子パスの制限を排除したこと、(2)これまで考慮できていなかった光電子が受ける弾性散乱(光電子回折)効果を取り入れたところである。プラズモンの発生過程にはIntrinsicな過程、Extrinsicな過程、そしてそれらの干渉効果がある。Al 2s光電子放出に伴いプラズモンを1つ励起する過程について計算を行い、各励起過程の相対的重要性を調べた。計算は新しい理論およびHedinらによる従来の理論を用いて行い、両者の結果を比較した。 1.深さ分布 固体中で光電子放出が起こる深さに対して、各励起過程の寄与を調べた。光のエネルギーは320eVとした。Hedinらの理論ではExtrinsic過程でプラズモンを励起した光電子の強度がIntrinsic過程で励起したものよりもかなり大きく、固体の深部まで寄与が残っていた。一方、新しい理論では、Intrinsic過程とExtrinsic過程の寄与はほぼ同程度であり、表面から7層目の原子層でほぼ全体の強度が収束した。 2.ロススペクトルの形状 各深さからの寄与を全て足し合わせて1次プラズモンロススペクトルを計算した。新しい理論では1の深さ分布の傾向の結果として、バルクプラズモンのピーク強度に対する表面プラズモンの相対的強度がHedinの理論よりも大きかった。また、Extrinsic過程の寄与がIntrinsicと同様か、それ以下であった。従来、Extrinsic過程が優勢との報告が多く、実験スペクトルをExtrinsic過程のみの計算で再現しようとする研究もあるが、本研究によりIntrinsic過程および干渉効果もExtrinsic過程と同様に重要であり、無視できないことが確認された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1次プラズモンロススペクトルの計算プログラムが完成し、計算が実行可能になったため。研究計画ではX線光電子スペクトル全体の形状の計算を目標としていたが、プログラムの大部分は完成している。
|
Strategy for Future Research Activity |
他の物質についても1次プラズモンの計算を行う。量子ランダウ公式自体は1次プラズモンだけでなくX線光電子スペクトル全体の形状を記述することができるため、全体を計算できるようなコードの開発も目指す。 量子ランダウ公式は導く際にいくつかの近似を用いており、それらは高エネルギーのときほど良い近似である。研究計画では電気双極子禁制方向を詳しく調べる計画だったが、光の偏光ベクトルと光電子放出の方向のなす角が大きくなるほど量子ランダウ公式がうまく働くためには高いエネルギーを必要とすることが最近報告された。高エネルギーでは計算コストが莫大になるため、偏光ベクトルと光電子放出の方向のなす角が小さい場合を主に扱っていくことにする。
|
Research Products
(2 results)