2012 Fiscal Year Annual Research Report
地上-衛星観測に基づく内部磁気圏の広エネルギーレンジの電子消失過程の解明
Project/Area Number |
11J03471
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
栗田 怜 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 磁気圏物理 / ディフューズオーロラ / 波動粒子相互作用 / ホイッスラーモード / THEMIS / GEOTAIL / FAST / 非線形 |
Research Abstract |
波動粒子相互作用によって引き起こされるピッチ角散乱は、磁気圏内の高エネルギー電子の消失過程として重要視されており、ピッチ角散乱による大気降下は、ディフューズオーロラの生成メカニズムとして示唆されている。一方で、波動粒子相互作用によるピッチ角散乱は、地球磁気圏内におけるプラズマ波動の励起現象に密接に関係していることが示唆されており、消失過程の理解のためには、プラズマ波動の励起過程の理解も不可欠である。本研究では、人工衛星と地上観測点による同時多点観測を用いたケーススタディを重ねる事によって、波動粒子相互作用による消失過程を明らかにしていくことと、プラズマ波動励起過程の理解を目標に研究を行った。 波動粒子相互作用による高エネルギー電子消失過程を理解するために、南極点基地上空における低高度衛星FASTによる降下電子・磁気赤道域周回衛星GEOTAILによるプラズマ波動の同時観測イベントの解析を行った。本研究で解析されたイベントでは、南極点基地におけるオーロラ光学観測が行われており、ディフューズオーロラがみられていた。このような、過去の研究では例のない理想的な観測ジオメトリを活用し、イベント中での降下電子生成メカニズムについて観測データと理論計算を合わせて考察した。データ解析と理論計算の比較より、イベント中でのディフューズオーロラの生成機構は、近年の統計的なアプローチにより広く支持されているホイッスラーモード波動によるピッチ角散乱では観測事実を説明が難しく、かつて棄却されていた、ECH波動によるピッチ角散乱である結果を見いだした。 地球内部磁気口における電子消失過程に関して、近年重要な役割を持つと考えられているライジングトーンコーラス・フォーリングトーンコーラスの励起過程を理解するために、THEMIS衛星で計測された電磁場の波形データの解析を行った。波形データの解析により、ライジングトーンコーラスの励起モデルから予測される周波数スペクトル構造を持つイベントを発見した。周波数変化率・パワースペクトルを観測結果とモデルに基づく値と比較した結果、非常によく整合することがわかり、ライジングトーンコーラスの励起モデルの妥当性を示した。フォーリングトーンコーラスの伝搬特性を統計的に解析した結果、背景磁力線に対して非常に大きな伝搬角を持ち、磁気赤道から極方向へ伝搬していることがわかった。これは、現存する励起モデルの仮定とは異なっており、フォーリングトーンコーラスの新しい励起モデルの必要性を提案した。ライジングトーンコーラスに関する結果はKurita et al.[2012]としてJournal of Geophysical Research誌に、フォーリングトーンコーラスに関する結果はKurita et al.[2012]としてGeophysical Research Letters誌に掲載されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初目標の1つとしていたディフューズオーロラの生成メカニズムの解明に関して一定の進捗があったことに加え、波動粒子相互作用の消失メカニズムを担うプラズマ波動の励起過程に対する理解が進んでおり、計画以上の進展があったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進行している人工衛星と地上観測の連携観測の解析イベント数を増やしていき、統計的な描像を見いだしていく予定である。現在は比較的低エネルギー帯の電子(<30 keV)の消失過程についての解析がメインであるが、今後は、より高エネルギーの電子(30-500keV)に関しても、同様の連携観測データの解析を進めていく予定である。2012年8月に米国のVanAllen Probesの打ち上げが成功し、データも順調に取得されているため、今後はより多くの連携観測データの解析例が増える事が期待される。
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