Research Abstract |
昨今注目されている歩行機械は,環境適応性は高いが上体自重を支持するために,関節に配置されたアクチュエータは大きなトルクを発揮する必要がある.このため,歩行機械の積載量の低下や,アクチュエータでのエネルギー消費の増加が問題となる.そこで,本研究では,上体自重の位置エネルギー変化を弾性力で釣り合わせることで,アクチュエータの負担を軽減し,脚歩行時の消費エネルギーの削減,および高出力化を狙っている.研究の計画は,大きくわけて3個の課題と,それらの統合で大別される.23年度はその3つの課題の基礎的研究を実施した. 1つめは,(A)脚関節補償原理・機構の自動化,2つめは,(B)傾斜面での脚関節補償原理の考案,3つめは,(C)動歩行時のエネルギーロスの回生である. (A)については,マイコンを利用した簡易的なシステムで成功した.本機構は,遊脚と立脚の検知さえ行えば,上体自重の補償を受動的に行えるため,簡素な制御システムで実現可能であり,システムの導入にソフト的な制約が少なく,応用に期待している. (B)については,1リンク平面モデル,2リンク平面モデルの解析により,傾斜時の基礎的な釣り合い関係を基部の傾斜および,自重とバネカのバランスの2つのパラメターで常に記述できることを示した.基部の傾斜を考慮に入れた自重補償の概念自体が世界的にもまれであり,その体系化は,今後の自重補償分野の発展に寄与すると考えている. (C)については,超低摺動のエアシリンダを歩行に連動させて,圧縮空気により歩行時のロスを回生するシステムを考案し,試作機による試験と解析的手法で,その妥当性を示した.約1.5kg程度の装置を利用して,歩行時の脚発揮力の1割程度を回生して,アシスト力として発生できる.電源を必要としない歩行補助であり,様々な場面での応用が容易であると考えている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度の研究計画内容を全て達成したため,このように自己評価を行った.研究内容自体は計画通り進展したが,研究内容に関係する国際特許出願を想定し,国際会議での発表を遅滞させる結果となった.この点は少々の減点要因である.しかし,それを補うべく,予定の2倍近い投稿を行いカバーしていると自己評価し,(2)を選択した.
|
Strategy for Future Research Activity |
課題の一つである,静歩行時の上体自重の自重補償(平地および傾斜地)について,新たに課題が発見された.それは脚自重の増加による慣性抵抗である.鉛直方向の負担が装置により軽減されるが,水平方向の負担が装置自重により増加するため,これのバランスを考慮することが新たな課題である.今後は,(c)動行時のエネルギーロスの回生システムを中心に,自重補償の大きさと,装置の自重の最適なバランスを検討して,これを解決したいと考えている.
|