2011 Fiscal Year Annual Research Report
高密度水文観測による不均質な山地崩壊発生メカニズムの解明
Project/Area Number |
11J03525
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
正岡 直也 京都大学, 農学研究科, 学振特別研究員(DC2)
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Keywords | 高密度観測 / 土層内水流 / 不均質な水文過程 / 基岩湧水 / 選択的流路 / 三次元浸透計算 |
Research Abstract |
高密度水文観測網により、無降雨時及び降雨時に発生する不均質な水文現象を詳しく把握できた。さちに三次元浸透計算モデルにより、観測斜面の水文過程を高精度で再現することができた。以下、「研究実施計画」に照らし具体的内容を述べる。 (A)リアルタイム高密度水文観測&崩壊観測 これまで各観測点の基岩面上にのみ設置していたテンシオメータを、表層・中層に増設した。これにより、合計118本のテンシオメータを約74m^2の観測斜面に設置するという前例の無い高密度での三次元的な土層内水流観測が可能になった。観測斜面にLANケーブルを敷設しオンラインでのデータ回収を行うことで、大規模降雨時の水流データを欠測無く取得できた。 無降雨時において、基岩湧水の発生地点では恒常的に鉛直上向きの水流フラックスが発生し、中層に乗り上げた水流は難透水層により鉛直浸透を阻害され、基岩面上でなく中層の飽和側方流として流下していく様子が観測された。降雨ピーク時は、通常の降雨浸透現象では発生し得ない基岩面上の連続した高圧力帯と、それに沿った上向きフラックスが難透水層の内部で観測され、風化基岩層内部の亀裂を通る選択的流路の存在が示唆された。このように三次元かつ高密度の水流観測により、複数の不均質な水文現象に起因する複雑な水流挙動を把握することができた。 (B)不均質性を考慮した三次元浸透計算モデル構築 観測斜面を多数の四面体要素メッシュに分割することで物理モデル化し、三次元のRichards式を有限要素法で解くことで浸透計算を行った。複雑な透水係数分布を任意に設定して難透水層や選択流路などの特性を再現し、さらに基岩湧水による水供給を実測値に基づき与えた結果、観測された三次元水流を良好に再現することができた。このように、斜面水文特性の中でも特に把握が困難な透水係数分布と水供給を、浸透計算を用いることで高精度に推定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
観測斜面の水文過程把握の点においては、大規模降雨時の欠測の無いデータが取得できたことからほぼ達成できたといえる。さらに水文過程のモデル化も順調に進んでいる。ただし、自然降雨による崩壊観測と崩壊予測モデル構築は未だ達成できておらず、今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに十分なデータが得られた高密度水文観測については、管理に多大な時間と労力を必要とするため、今後は規模を縮小しながら継続する。今後は主に自然降雨による崩壊観測を目指し、Webカメラを用いた観測を続ける。また前年度の水文観測結果の解析から、水文過程の経年変化の存在が明らかになった。僅かな研究例しかないテーマなので、解明のために今後は(これまで観測を行っていない)積雪期を跨いだ水文観測に取り組む。
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Research Products
(8 results)