2011 Fiscal Year Annual Research Report
集団内協力と集団間攻撃 : 間接互恵性モデルと共進化モデルが予測する人間の利他性
Project/Area Number |
11J03610
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
三船 恒裕 神戸大学, 人文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 内集団バイアス / 攻撃 / 集団淘汰 / 共進化モデル |
Research Abstract |
本年度は集団内への協力性を生起するメカニズムを検証する実験と、外集団への攻撃性を生起させるメカニズムを検証する実験の両面から研究を行なった。まず、北海道大学との共同研究として、経済学的合理性に反してでも他者を攻撃するかを測定する実験パラダイムを開発した。この実験において参加者は一定時間内に元手の1000円から100円を犠牲にしてボタンを押し、相手の利得を500円引き下げることができる。相手も同じ決定を行うことができるが、どちらか一方が先にボタンを押すと、もう一方は後から仕返しをすることができず、その時点で実験が終了となる。お互いにとって最も良い結果はお互いがボタンを押さないという結果である。お互いが自己利益最大化を目指していると考えると、相手はボタンを押さないと予測できるが、それ以外の何らかの理由で相手がボタンを押すと考えるならば相手よりも先に押したほうが得である。こうした状況下で人々はボタンを押すかを検証したところ、約20%の参加者が実際にボタンを押すという結果を得た。そのうえで、ここで示された攻撃性が外集団に対してより強く働くのかを検証するために、社会心理学で伝統的に用いられてきた最小条件集団パラダイムを用い、内集団相手と外集団相手への攻撃率を比較したところ、両者に差が見られなかった。これは集団淘汰モデルあるいは共進化モデルからの予測に反する結果である。ただし、ここにはもともと攻撃性が発揮されにくい実験状況だったという問題がある。そこで現在、よりボタンを押しやすい実験状況を開発し、これを最小条件集団パラダイムに応用する実験を計画中である。こうした実験計画と同時に、内集団への協力を高める要因として集団淘汰モデルから予測され、実証された結果を、間接互恵性モデルからも説明可能であるかを検証する実験計画を実施中である。これは現在、プレテストを終了し、本実験を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究計画では外集団への攻撃を測定する実験パラダイムを慎重に計画し、適切に攻撃を測定できることを確かめることが根本的に重要である。本年度はいくつかの実験を繰り返し、そうした実験パラダイムが開発できるめどがついたという意味で当初の予定通りに進展している。またそれと同時に、集団内への協力に関する新たな実験も進行中であり、この部分に関しては当初の予定を超えた進展であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、外集団への攻撃行動を発現させる社会的選好を人々が保持しているのかを確認する実験を行い、もしそれが認められたならば共進化モデルの予測どおり、それが内集団への協力性と相関するのかを確かめる実験を行う。これらの実験は適切な実験施設が無ければ実施不可能なため、様々な研究機関と連絡を取り合い、実施を検討していく。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Modesty in self-presentation : A comparison between the USA and Japan2012
Author(s)
Yamagishi, T., Hashimoto, H., Cook, K.S., Kiyonari, T., Shinada, M., Mifune, N., Inukai, K., Takagishi, H., Horita, Y., Li, Y.
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Journal Title
Asian Journal of Social Psychology
Volume: 15
Pages: 60-68
DOI
Peer Reviewed
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