2011 Fiscal Year Annual Research Report
組換えBAC遺伝子導入ラットを用いたAPCタンパク質の炎症抑制ドメインの同定
Project/Area Number |
11J03639
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉見 一人 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | APC / ラット / BACトランスジェニックモデル / DSS / 大腸炎 |
Research Abstract |
これまでに、癌抑制遺伝子産物であるAPCタンパク質のC末端アミノ酸321個を欠損する遺伝子変異をホモに持つラット(KADラット:Apc^<Δ2523/Δ2523>)を作製し、KADラットがデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発大腸炎に対して、大腸炎症反応の持続を示すことを明らかとした。 本年度はまず、KADラットおよび対照系統のF344/NSlcラットを交配し、ヘテロラット(Apc^<Δ2523/->)を作製し、DSS投与による大腸炎誘発試験を実施した。臨床症状の経時的観察、病理解析、炎症関連遺伝子の発現量解析の結果、ヘテロ個体は全てF344と同等の表現型を示した。このことから、APCのC末端領域欠損による大腸炎症修復の遅延が、劣性の表現型であることを明らかとした。そこで、DSS誘発大腸炎の抑制を指標としたレスキュー実験を行うために、KADラットに正常および組み換えApc遺伝子を含むBACクローンを導入したTg-KADラットを作製することとした。現在までに直鎖状BACクローンの抽出・精製に成功しており、BACクローンTg-KADラットを作製中である。今後、作製されたTg-KADラットを対象に、KADラットおよびF344ラットと炎症に対する表現型を比較検討することで、DSS誘発大腸炎に影響を及ぼすAPCタンパク質の責任ドメインを同定することができる。 またF344ラットおよびKADラットの12.5日胎児を用いてラット胎児由来線維芽細胞(REF)を準備した。各系統のREFを用いて、細胞増殖速度、Wntシグナル活性を測定した。KAD REFはF344 REFと比べて同等の細胞増殖速度であった。ルシフェラーゼ活性測定の結果、両者に違いは見られず、KAD REFのWntシグナル系は正常に機能していると推測された。各REFの細胞動態、APC関連タンパク質の局在について現在比較検討中である。これらの研究によりAPCが持つ大腸炎症修復過程における新たな機能を生体レベルおよび細胞レベルで解明できると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は主にApc変異ラットヘテロ個体の作出、およびそれらの大腸炎発症時における表現型の比較検討に精力的に取り組み、APCタンパク質C末端領域の欠損による大腸炎高感受性が劣性の表現型であることを明らかとした。さらに申請者は新しくin vitroの実験系を立ち上げ、Apc変異ラット由来初代線維芽細胞の培養に成功し、細胞レベルでの機能解析を着実に進めている。本年度得られた研究成果は、大腸炎におけるAPCタンパク質の生理機能を解明する上で、非常に重要な知見であり、本研究の目的としたAPCと大腸炎症との関連機序の解明に着実に近づいていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、精製した直鎖状BAC DNAを用いて顕微授精法を行い、BACクローンTg-KADラットを作製中である。今後、作製されたTg-KADラットを対象に、DSSによる実験的大腸炎を誘発し、その臨床症状、病理解析、炎症関連遺伝子の発現量解析を実施しKADラットおよびF344ラットと比較検討する。さらに、APCタンパク質が大腸炎症時に血管内皮細胞で強発現していることが確認されたことから、KADおよびF344ラット由来血管内皮細胞についても初代培養法により準備し、細胞移動速度、細胞接着性等の細胞動態解析、APC関連タンパク質の局在の検討を行う予定である。
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Research Products
(3 results)