2011 Fiscal Year Annual Research Report
一分子直接観察による好熱菌由来ATP合成酵素FOF1反応機構解明
Project/Area Number |
11J03653
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
曽我 直樹 早稲田大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ATP合成酵素 / 一分子実験 / 好熱菌由来F_0F_1 / 電気化学ポテンシャル / 膜蛋白質 / リポソーム |
Research Abstract |
生化学実験によるATP合成活性測定 好熱菌由来F_0F_1(TF_0F_1)の溶液中における見かけ上のATP合成活性が極めて低かったため(<0.5ATP/s)、顕微鏡下での一分子直接観察を試みる前に、TF_0F_1のATP合成活性向上を目指した再構成膜小胞(リポソーム)への再構成法の最適化を行い、ATP合成反応特性・駆動力依存性を調べた。生化学実験では、リポソーム外の溶液を瞬時に変える方法とK^+濃度勾配に従ったリポソームへのK^+流入により、ATP合成反応駆動力のH^+濃度勾配ΔpHと膜電位ΔΨを形成した。ΔΨ値はリポソーム内外のK^+濃度比から算出した。 まず、大腸菌で発現、精製したTF_0F_1は凝集する性質を持っていたため、脂質と過剰量の界面活性剤存在下でTF_0F_1を単分散させた。界面活性剤の除去により形成したTF_0F_1-リポソームは室温でATP合成反応特性の決定に十分なATP合成活性(~20ATP/s)を示し、高い再現性も得られた。ATP合成反応基質ADPとPiのK_mを調べたところそれぞれ13μM、550μMであった。しかし、ATP合成反応駆動力依存性を調べるにあたり、脂質に大量のK^+が混入しており、溶液中のK^+濃度の制御を行えず厳密なΔΨの制御を妨げる事が分かった。よって、混入しているK^+の除去を行い厳密なΔΨ制御を可能にしたところ、過去のリポソームを用いたATP合成反応の報告では確認されてこなかったΔΨのみによるATP合成反応駆動(ΔpH無し)に成功した。また、ΔΨとΔpHがATP合成活性に同等に寄与する事も明らかにした。 顕微鏡下での回転運動一分子直接観察 巨大リポソームを用いたATP合成反応時の一分子回転運動直接観察を目指している。現在、実験系を組み上げたが、電圧パルス印加により巨大リポソーム上に小さいリポソームが形成するなどの問題点の解決に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
TF_0F_1のATP合成反応の最適条件を生化学実験で突き止めた。また、回転運動一分子観察実験系(光学系、ガラス修飾、温度調節ユニットなど)も一通り開発し、回転運動一分子直接観察を試みている。解決すべき問題点が残るが、おおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
ΔΨのみでATP合成反応駆動を行えるという生化学実験の知見を基に研究を進めていく。具体的には、電圧パルス印加により形成したΔΨによるATP加水分解反応から合成反応に移行する際の可逆的な回転運動観察を試みる。まずATP加水分解反応時の回転運動観察中にATP合成反応を促す方向に電圧パルス印加によるΔψを形成し、加水分解反応回転速度が低下していく様子を確認していく。徐々に電圧パルス振幅を増加させていきATP加水分解反応時の回転運動(反時計方向)からATP合成反応時の回転運動(時計方向)へ移行する様子を観察していく。
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Research Products
(5 results)