2012 Fiscal Year Annual Research Report
一分子直接観察による好熱菌由来ATP合成酵素FOF1反応機構解明
Project/Area Number |
11J03653
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
曽我 直樹 早稲田大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ATP合成酵素 / 好熱菌由来F_2F_1 / 膜蛋白質 / 電気化学ポテンシャル / リポソーム / 巨大人工膜小胞 |
Research Abstract |
ATP1分子の合成に使われるH^+の数とその自由エネルギー変化量 好熱菌由来F_0F_1(TF_0F_1)のATP合成活性測定系を改良し、より定量的なATP合成活性測定を可能にした。 具体的には、TF_0F_1を再構成させる人工膜小胞を構成する脂質組成を変更する事で更なるTF_0F_1のATP合成活性向上を図った。これまでに使用してきた大豆由来の脂質にアミン基を持つ脂質をわずかに添加した条件において、ATP合成活性がこれまでの値(~20s^<-1>)より2倍近くの~35s^<-1>まで上昇する事が分かった。この実験系を利用し、1つのATP合成反応に必要となるH^+の数と自由エネルギー変化量を調べた。 ATP合成反応における自由エネルギーはΔG=ΔG^<0,>+κ_BT・ln{[ATP]・M/[ADP]・[Pi]}-nΔμ_<H+>と表せる。 ここでΔG^<0,>は標準状態における自由エネルギー変化量、nは1つのATP合成反応に必要となるH^+の数である。TF_0F_1のH^+の移動とATP合成、加水分解が釣り合う時、ΔG=0となる事から、様々な条件でこれらの釣り合うエネルギー(H^+駆動力:pmf)を求めればΔG^<0,>とnが求まる。そこで、[ATP]=0.5-2μM,[ADP]=20-640μM,[Pi]=0.1-10mMの範囲内で、ΔpHとΔΨを制御し、それぞれの釣り合うpmfを調べた。その結果、1つのATPを合成するために必要なH^+の数は3.3±0.4,自由エネルギー変化量は38.7±4kJ/molと求まった。 須微鏡下での回転運動一分子直接観察 我々がこれまでに調製した巨大人工膜小胞(GUV)には脂質の凝集体が付着していた。この凝集体は、GUVからのイオン等の漏れの原因となり、pmfの制御が困難であった。そこで、この脂質凝集体を排除する電気形成法と呼ばれる新たなGUV調製方法を試みた。この方法では、GUVの大きさがこれまでの手法より小さくなる傾向を持つが、形成したほとんどのGUVには脂質凝集体が確認されなかった。今後、この手法により形成したGUVを用いてH^+駆動の回転運動の観察を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
好熱菌由来F_0F_1のH^+駆動回転観察を行える最適条件が生化学実験より導けた一方、顕微鏡下における新規実験系構築が現時点で中途半端の段階であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで用いていたGUVの問題点であった脂質の凝集体を含まないGUV調製法を開発した。まずは、ATP加水分解駆動の回転運動の観察を行う。回転中にATP加水分解を抑える向きの電気パルスを与えた時のビーズの挙動を調べていく。電圧パルスに応じたビーズの挙動の変化が確認出来た後、電気パルスの振幅を上昇させていき、ATP加水分解反応時の回転運動(反時計方向)からATP合成反応時の回転運動(時計方向)へ移行する様子を観察していく。
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Research Products
(2 results)