2011 Fiscal Year Annual Research Report
湾曲π電子系を有するホスファグラフェン類縁体の合成と応用
Project/Area Number |
11J03688
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
橋本 士雄磨 京都大学, 工学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | ヘテログラフェン / 有機リン化合物 / Friedel-Crafts反応 / π共役 / 典型元素化学 / 分子内環化反応 / 多環芳香族炭化水素 |
Research Abstract |
π共役系にヘテロ原子を有する化合物群は,π軌道に摂動が加わることで特異な物性を示すため,機能性材料として広範な用途展開が行われている.しかしながら,その多くは直線状に広がったπ共役環上にヘテロ原子を有するものであり,π共役環に囲まれた位置にヘテロ原子を組み込んだ化合物の合成例は限られ,その物性もほとんど明らかになっていない.そこで本研究では,分子内タンデムホスファFriedel-Crafts反応を鍵反応とすることで,リン原子が共役系の中央に位置するホスファナフトペリレン類縁体の合成に成功した.これらの分子は炭素-リン結合長の差及び置換基の立体障害により,螺旋型,お椀型,折れ曲がり型といった特徴的な湾曲性を持つことがX線結晶構造解析により明らかとなっている.同様の手法により,アザホスファジベンゾクリセン誘導体やジホスファペンタセン誘導体などの短段階合成も可能である.今後は,得られたホスフィン化合物について,単核あるいは複核金属錯体の配位子としての利用などにも取り組んでいく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
年度前半は計画の通り,ホスファFriedel-Crafts反応を用いたリン化合物の合成に取り組み,学術論文誌において発表した(Org, Lett. 2011, 13, 2130).さらに,同手法を用いたホウ素窒素縮環部位を有する芳香族化合物(アザボリン類)の台成も達成した(J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 18614).合成したホウ素窒素縮環芳香族化合物群は電荷移動度が大きく,さらなる応用展開も期待される.以上のような状況を鑑み,当初の計画以上に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
リン化合物群については,金属錯体の配位子としての利用を視野に研究を進める予定である.また,新たに合成したホウ素窒素縮環芳香族化合物については,種々の誘導体の合成によりさらなる電子物性の向上を目指していく.
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