2011 Fiscal Year Annual Research Report
神経ペプチドPACAPを標的基盤とする統合失調症発症の実態に即した創薬アプローチ
Project/Area Number |
11J03702
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
狭間 啓佑 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | PACAP / microRNA / 5-HT2 / 大脳皮質体性感覚野 / 精神疾患 / in situ hybridization / 架橋型DNA / 慢性社会的敗北ストレス |
Research Abstract |
精神疾患の発症メカニズムに即した仮説であるtwo-hit仮説は、遺伝的要因を含む脆弱性に加えて、環境的要因を含む様々な後天的な要因により発症するという遺伝子-環境因子の相互作用仮説であり、その機構には、非コードRNA、エピジェネシス等が関わっていると想定されている。本研究は、精神機能に関わる神経ペプチドPACAPに着目し、遺伝子-環境因子の相互作用による精神疾患の発症メカニズムを探ることを目的とし、本年度は以下の結果を得た。 1.PACAP欠損マウスはヒトやマウスなどに幻覚を発現させるセロトニン(5-HT)2作動薬に対する過感受性を示す。その機序として大脳皮質体性感覚野の過感受性が、5-HT_<2A>受容体を発現していない二次的な神経細胞の活性化亢進を伴う可能性を明らかにした。 2.遺伝子-環境因子相互作用に密接に関与していることが想定されるエピジェネシスを検討することを目的とし、microRNA検出系を構築した。脳の細胞レベルでの検出を可能にするため、検出方法はin situ hybridization法を用いた。microRNAの短い配列への特異性を確保するために、架橋型DNA(LNA/BNA)を用いることで脳に高発現するmicroRNAであるmiR-124aの検出に成功した。 3.樹状突起スパインの形態形成とPACAPの関係を明らかにすることを目的とした検討を行った。培養19日目のマウス初代培養海馬神経細胞へPACAPを処置し、21日目に免疫染色法によりPSD-95を検出した結果、シナプス後部の足場タンパクであるPSD-95puncta数が樹状突起上で上昇しており、PACAP-/-マウスの初代培養海馬神経細胞では樹状突起上のPSD-95puncta数が減少していた。以上より、PACAPは樹状突起におけるPSD-95量を増強させることでスパイン形態に影響を与えている可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PACAP欠損マウスが示す5-HT2R作動薬への大脳皮質体性感覚野の過感受性は、5-HT2ARを発現していない二次的な神経細胞の活性化亢進を伴う可能性を明らかにした。また、架橋型DNAプローブを用いたin situ hybridization法によるmicroRNAの検出系をセットアップした。これまでに脳に高発現するmicroRNAであるmiR-124aの検出に成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
妥当性が高い精神疾患の病態モデル動物(PACAP欠損マウス等)において、microRNAの発現あるいはその変動を比較する。このとき、発現細胞を同定するために、細胞種特異的マーカー、具体的には、ニューロン特異的マーカーscg10やグリア特異的マーカーGFAPなどについて、それぞれのプロモーターと異なる種類の蛍光タンパク質の融合遺伝子をトランスフェクションし、細胞同定の指標にする。 慢性社会的敗北ストレス負荷後のPACAPの発現変動を検討し、PACAP-環境相互作用に関わる脳領域を探索する。その後、特定された脳領域において次世代シークエンサーを用いて遺伝子-環境相互作用に関わる非コードRNAの網羅的探索を行う。
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Research Products
(2 results)