2012 Fiscal Year Annual Research Report
神経ペプチドPACAPを標的基盤とする統合失調症発症の実態に即した創薬アプローチ
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11J03702
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
狭間 啓佑 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | PACAP / microRNA / 精神疾患 / 繰り返し社会的敗北ストレス / うつ病 / 心的外傷後ストレス障害 / 遺伝子-環境因子の相互作用 / アレイ解析 |
Research Abstract |
精神疾患の発症メカニズムに即した仮説であるtwo-hit仮説は、遺伝的要因を含む脆弱性に加えて、環境的要因を含む様々な後天的な要因により発症するという遺伝子-環境因子の相互作用仮説であり、その機構には、非コードRNA、エピジェネシス等が関わっていると想定されている。本研究は、精神機能に関わる神経ペプチドPACAPに着目し、遺伝子-環境因子の相互作用による精神疾患の発症メカニズムを探ることを目的とし、本年度は以下の結果を得た。 1.うつ病や心的外傷後ストレス障害の有望な動物モデルと考えられている繰り返し社会的敗北ストレスモデルを作製した。遺伝的均一集団である近交系マウスを用いて本モデルを作製し、うつ病様行動異常を示すストレス感受性群と示さないストレス耐性群の2群に分かれることを確認した。対照群、ストレス感受性群およびストレス耐性群のマウス個体の脳領域からmiRNAを抽出し、アレイ解析による発現比較を行った。その結果、マウスmiRNA全1141個のうち、情動障害発症に関与する可能性がある候補miRNAを15個に絞りこんだ。 2.野生型マウスは、連続10日間の社会的敗北ストレスにより、うつ様行動(社会性行動が低下し、シュークロース嗜好性が低下する)を示す群と示さない群の2群に分かれた。一方で、本ストレスをPACAP+/-マウスに負荷した際の影響を検討したところ、PACAP+/-マウスは全てのマウスがうつ様行動を示さず、ストレスを負荷しなかった対照群と同等の社会性行動及びシュークロース嗜好性を示すことを見出した。さらに、10日間の敗北ストレスを負荷した野生型マウスの内側前頭前野において、PACAPとその受容体PAC1受容体のmRNA発現量が低下していることを見出した。以上の結果は、慢性社会的敗北ストレスによる異常行動発現に、内因性PACAPが関与することを示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
うつ病や心的外傷後ストレス障害の有望な動物モデルと考えられている繰り返し社会的敗北ストレスモデルを用い、情動障害発症に関与する可能性がある候補miRNAを15個に絞りこんだ。また、架橋型DNAプローブを用いたin situ hybridization法によるmicroRNAの検出系をセットアップした。現在までに、ストレスによる不安惹起への関与が報告されているmiRNA-34aを標的とし、視床網様核で特異的なシグナルを確認している。
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Strategy for Future Research Activity |
アレイ解析で絞り込んだmicroRNAの更なる絞り込みを行う。具体的には、繰り返し社会的敗北ストレス負荷後に抗うつ薬投与を行い症状の改善を評価する。その際に、症状とパラレルに変動するmicroRNAを特定することで情動障害発症に関与する可能性があるmicroRNAを探索する。
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Research Products
(4 results)