2011 Fiscal Year Annual Research Report
乱れのあるトポロジカル絶縁体における輸送現象の研究
Project/Area Number |
11J03743
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
小林 浩二 上智大学, 理工学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | トポロジカル絶縁体 / 量子輸送現象 / アンダーソン局在 / メゾスコピック系 |
Research Abstract |
量子ネットワークモデルを用いた数値計算により、2次元Symplecticのトポロジカル絶縁体転移、すなわち量子スピンホール転移点における局在長の臨界指数を精密に評価した。バルクの系ではなく、ヘリカルエッジ状態が現れる条件下での計算は本研究が初である。量子スピンホール転移点においては、転移点の両側、特にトポロジカル絶縁相側で局在長が発散するために有限サイズスケーリングによる解析が困難であることが知られていた。これに対し我々は、通常用いられるMacKinnon-Kramer変数(1番目のリアプノフ指数の逆数)ではなく、2番目のリアプノフ指数を用いる、というシンプルかつ独創的な手法を用いることにより局在長の臨界指数を精密に求めることに成功した(2.73±0.02)。さらにこの手法が整数量子ホール転移点における計算に対しても有効であることを示した。これらの計算結果より、局在長の臨界指数は、系の境界条件やトポロジカルな性質に依存しない普遍的な値をとることが明らかになった。 正方格子上の強束縛モデルを用いて、2次元Unitaryのトポロジカル絶縁体転移、すなわち整数量子ホール転移点のコンダクタンス分布関数を計算した。このモデルに磁場と乱れを与えた場合の計算、特に転移点の正確な探索にはかなりの計算コストがかかるが、我々はより簡便なネットワークモデルによる計算結果を利用し、計算にかかる手間を大幅に減らすことに成功した。その結果、最低次のランダウ準位におけるコンダクタンス分布関数が、強束縛モデルとネットワークモデルで高い精度で一致することを示した。我々はこれまで、トポロジカル絶縁体転移点におけるコンダクタンス分布関数はエッジ状態の性質に強く影響されることを主張してきたが、この効果がモデルの特性によらず普遍的であることが確かめられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画通り転移点の普遍的な性質を精密に調べたことに加え、トポロジカル絶縁体の輸送特性を調べる際に効果的な計算手法を確立した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究で確立された手法を用い、様々な種類のトポロジカル絶縁体の普遍的な輸送特性を調べる。
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Research Products
(4 results)