2011 Fiscal Year Annual Research Report
行動の進化をもたらす遺伝子と神経回路の変化を特定する
Project/Area Number |
11J03778
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石川 由希 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 行動進化 / 求愛行動 / 種間交雑 / fruitless / 交尾相手の選好性 / 求愛歌 |
Research Abstract |
本研究はDrosophila属の求愛行動をモデルとして、行動の進化をもたらす遺伝子と神経回路の変化を特定することを目的とする。特に求愛行動のマスターコントロール遺伝子とされるfruitless遺伝子に注目し、fruitless発現神経回路の種特異性とDrosophila属の求愛行動の種特異性との関連を調べる。材料としては、モデル生物であるD.melanogasterとその近縁種であるD.simulans、また種間交雑によって得られた不妊のF1を用いた。 本年度は、D.melanogasterとD.simulansのF1を用いて、2種の求愛行動のうち、fruitless遺伝子がその種特異性の成立に関与している行動形質をスクリーニングした。スクリーニングの際には、fruitless null変異体とD.simulansとの交雑個体(sim×fru-,D.melanogaster由来のfruitless遺伝子しか持たない)と、野生型のD.melanogaster(Canton-S)とD.simulansとの交雑個体(sim×mel,D.melangoaster、D.simulans由来両方のfruitless遺伝子を持つ)の求愛行動を比較し、sim×melよりもsim×fru-でD.simulans的な行動形質を探索した。行動形質としては、これまで種特異性があることが報告されている求愛歌、シザリング、交尾相手の選好性に関して特に注目した。 スクリーニングの結果、fruitless遺伝子はF1(♂)の交尾相手の選好性に関与している可能性が高いことがわかった。交尾相手の選好性は種分化や生物進化の理解において最も重要な課題の一つであり、この発見は選好性の分子・神経基盤を理解する重要な一歩となると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「Drosophila属の求愛行動の種特異性は、性行動のマスターコントロール遺伝子であるfruitless発現パターン、すなわちオス型神経回路の種特異性によってもたらされている」という作業仮説に基づき、行動形質のスクリーニングを行い、性行動の種特異性の・部(交尾相手の選好性)に対して、fruitless遺伝子が一定の機能を果たしていることを発見した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、交尾相手の認識に寄与するシグナルを行動実験に基づいて絞り込んでいくと同時に、F1とD.melanogasterのオス型神経回路をGAL4-UASシステム、FLP-FRTシステムを用いて可視化/活性化し、比較することで、交尾相手の選好性の分子・神経基盤を単一ニューロンレベルで理解することを目指す。また、性行動の誘起に中心的な役割を果たしているもう一つの因子doublesex遺伝子の影響に関しても同様にスクリーニングしていく。
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Research Products
(4 results)