2012 Fiscal Year Annual Research Report
行動の進化をもたらす遺伝子と神経回路の変化を特定する
Project/Area Number |
11J03778
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石川 由希 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 行動進化 / 求愛行動 / 種間交雑 / 交尾相手の選好性 / 体表フェロモン |
Research Abstract |
本研究はDrosophila属の求愛行動の進化をもたらす遺伝子と神経回路の変化を特定することを目的とし、D. melanogasterと姉妹種であるD. simulans、またこれらのF1雑種個体を用いて実験を進める。 melanogasterとsimulansのオスには交尾相手の選好性に種特異性がある。第一年度までの研究でF1雑種個体は交雑に用いたsimulansの系統によって異なる選好性を示し、またfruitlessの変異がその選好性の種特異性に関与することを示唆する結果が得られた。本年度はこれらのF1雑種個体の選好性と体表フェロモンの関連性を調べた。フェロモン塗布実験の結果、F1雑種個体の求愛活性はmelanogasterフェロモンによって抑制され、simulansフェロモンによって促進されることがわかった。F1雑種個体に対する melanogasterフェロモンの抑制効果はsimulansに対する効果よりも低く、一方F1雑種個体に対するsimulansフェロモンの促進効果はsimulansに対する効果よりも高かった。続いて、melangoasterにおいてメス特異的に存在する7,11-heptacosadiene(7,11-HD)と、simulansにおいてメスの体表に豊富に存在する7-tricosene(7-T)の効果を調べた。その結果、F1雑種個体の求愛活性はsimulansの求愛活性と同様に、7,11-HDにより抑制され7-Tによって促進されることがわかった。これらの結果からF1雑種個体のフェロモン選好性は基本的にsimulans型であると言える。一方、fruitlessの変異が求愛相手の選好性の種特異性に関与するという結果に関しては、掛けあわせに用いるmelanogaster系統を増やしたところ、再現性が得られなかった。今後は体表フェロモン受容に関与する遺伝子やニューロンに焦点を当てて、このF1雑種個体をsimulans型フェロモン選好性の細胞分子基盤を解析していく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
melanogasterとF1雑種個体の交尾相手の選好性の違いが、体表フェロモン選好性の違いによって決まっていることを明らかにし、さらに7,11-heptacosadieneと7-tricoseneという2つのフェロモン成分に対する選好性が異なることによるものであることを示した。
|
Strategy for Future Research Activity |
melanogasterで既に明らかになっている体表フェロモン(7,11-heptacosa(lieneや7-tricosene)受容に関与する遺伝子の発現パターンやニューロンの数、形態に関して、melanogasterとF1雑種個体で詳細に比較し、その違いを見出す。また、これらの遺伝子発現のノックダウンやニューロンの強制活性化、強制不活性化、カルシウムイメージングなどを用いて、melanogasterやF1雑種個体の選好性に対する影響やその違いに関して調べる。
|
Research Products
(6 results)