2011 Fiscal Year Annual Research Report
メダカ成体生殖腺における性的可塑性の分子・細胞メカニズム
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11J03821
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
中本 正俊 基礎生物学研究所, バイオリソース研究室, 特別研究員(PD)
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Keywords | aromatase / 芳香化酵素 / 卵巣 / メダカ / 性転換 |
Research Abstract |
性分化の大きな特徴の一つは可塑性を有することである。雌のメダカ成魚に対して女性ホルモンであるエストロゲン合成に必須であるアロマターゼの阻害剤を投与し、エストロゲン合成を阻害すると卵巣が退化して機能的な精巣が形成された。このことは卵巣における可塑性の発現にはエストロゲンが重要であると考えられている。しかし、このエストロゲン量の低下による性転換の分子メカニズムについてはまったくわかっていない。生体卵巣での性転換におけるエストロゲンの役割を明らかにするために、平成23年度はエストロゲンの合成に必須のステロイド代謝酵素である卵巣型aromataseの変異メダカの表現型の解析を行った。これまで硬骨魚類ではエストロゲンの経口投与により遺伝的雄(XY)個体の雌への性転換が起こることからエストロゲンが卵巣分化に重要であると信じられてきた。しかし卵巣型aromataseの変異メダカでは初期性分化は正常に進行し遺伝的性に従ってXY個体は精巣をXX個体は卵巣を形成した。このことからエストロゲンは初期卵巣分化には関与しないことが直接的に示された。また卵巣型aromataseの変異メダカでは遺伝的雌(XX)個体の卵巣では卵黄の蓄積が見られないこと、そして成魚の卵巣内の一部で精子形成が起こることが明らかになった。メダカは孵化後約3か月で成熟し産卵を始める。XX成魚での精子形成は孵化後3か月より前の個体では見られなかった。孵化後4か月の個体では背鰭および尻鰭の形が雄型に変化し、精子形成が観察された。これらの結果から成魚卵巣でのエストロゲン量が性的可塑性の発現に"直接"関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は卵巣型aromataseの変異メダカの表現型の解析を行い、エストロゲンが成体卵巣での性的可塑性の発現に直接関与していることを示した。これにより研究開始当初の仮説および方針が概ね正しいことが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず卵巣型aromataseの変異メダカで見られた成体卵巣での性転換の過程を形態学的手法、分子生物学的手法、生化学的手法を用いて詳細に解析し、性転換がどの部位から始まり、どのような過程を経て最終的に精巣組織が構築されるのかを明らかにする。当初の計画通り、変異メダカに正常なaromatase遺伝子を導入し変異のレスキュー実験を行う。また、導入した正常なaromatase遺伝子をノックダウンすることによるコンディショナルな遺伝子発現解析系の構築を試みる。これらの遺伝子組み換えメダカを用いて成体卵巣におけるエストロゲン量の低下によって誘導される性転換過程の分子メカニズムを明らかにする。
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Research Products
(1 results)
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[Journal Article] Expression of 3β-hydroxysteroid dehydrogenase (hsd3b), star and ad4bp/sf-1 during gonadal development in medaka (Oryzias latipes)2012
Author(s)
Nakamoto, M., Fukasawa, M., Tanaka, S., Shimamori, K., Suzuki, A., Matsuda, M., Kobayashi, T., Nagahama, Y., Shibata, N.
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Journal Title
Gen Comp Endocrinol
Volume: 176
Pages: 222-30
DOI
Peer Reviewed