2012 Fiscal Year Annual Research Report
メダカ成体生殖腺における性的可塑性の分子・細胞メカニズム
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11J03821
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
中本 正俊 基礎生物学研究所, バイオリソース研究室, 特別研究員(PD)
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Keywords | aromatase / 芳香化酵素 / 卵巣 / メダカ / 性転換 |
Research Abstract |
これまでの研究から卵巣中のエストロゲン量の低下が成体生殖腺の卵巣から精巣への機能的性転換を誘起することが報告されている。このことからエストロゲンが性の可塑性の発現・保持に重要であることが示唆されている。しかし、エストロゲンが卵巣の分化・性的可塑性の発現過程において具体的にどのような働きを果たしているかについては不明な点が多い。そこで、エストロゲンの卵巣分化における機能を明らかにすることを目的として、エストロゲンの合成に必須のステロイド代謝酵素aromataseの機能欠損変異メダカをTILLING法により単離し、表現型の解析を行なった。 平成24年度は米国 ワシントン大学、School of Aquatic and Fishery SciencesのGraham Young教授の研究室に約10か月間滞在し、卵巣型アロマターゼ変異メダカの生殖腺の表現型の形態学的/生化学的解析を行った。まずRadioi㎜unoassay法により卵巣型アロマターゼ変異メダカの生殖腺内のエストロゲン量を測定した。卵巣型アロマターゼ変異メダカの卵巣内のエストロゲン量はRadioi㎜unoassay法の測定限界レベルまで減少しており、変異メダカでは卵巣型アロマターゼの活性が欠損していることが示された。 また新たにエストロゲン量の減少による卵巣の崩壊・性転換過程に関わる遺伝子群を同定することを目的として、RNA-seq法による遺伝子発現の網羅的解析を行つた。卵巣崩壊の初期の事象である顆粒膜細胞層の異常増殖に着目し、顆粒膜細胞層の異常増殖が始まる前の正常な形態の卵巣型アロマターゼ変異メダカの卵巣および多数の厚い顆粒膜細胞層を持ち濾胞の崩壊が始まっている卵巣において発現しているmRNAの網羅的なシークエンスを行い卵巣の崩壊が始まる前後の遺伝子発現の比較を試みた。その結果、約1000個の遺伝子の発現が変化していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は卵巣型aromataseの変異メダカの卵巣中のエストロゲン量の測定および性転換過程で発現する遺伝子のトランスクリプトーム解析を行なった。その結果、卵巣分化におけるエストロゲンの機能についてこれまでにない新しい知見が得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は卵巣型aromatase変異メダカで見られた成体卵巣での性転換の過程を形態学的手法、分子生物学的手法、を用いて詳細に解析し、性転換がどの部位から始まり、どのような過程を経て最終的に精巣組織が構築されるのかを明らかにする。また、トランスクリプトーム解析に多数の成体卵巣の可塑性、性転換に関わる遺伝子の候補が得られた。これらの候補遺伝子について詳細な発現解析と機能解析を行ない成体卵巣の可塑性の分子メカニズムを明らかにする。
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Research Products
(1 results)