2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト脂肪細胞を用いた細胞内代謝制御における転写因子p53の役割と標的分子の探索
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11J03835
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
永野 秀和 千葉大学, 大学院・医学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 転写因子 / p53 / エネルギー代謝調節 / 癌抑制機能 |
Research Abstract |
癌と糖尿病・動脈硬化などの生活習慣病の接点に着目し、最先端の技術である次世代型シークエンサーによるRNA-sequenceを用いたゲノムワイド解析を行い、細胞内代謝調節に関連するp53下流遺伝子の探索を行った。ヒト前駆脂肪細胞におけるRNA-sequenceの結果から核酸代謝に関わる酵素と相同性の高いdihydropyrimidinase-like 4(DPYSL4)を同定し、エネルギー産生・酸素消費調節に関わる機能解析を行った。脂肪細胞においてsiRNAによってp53をノックダウンさせると、DPYSL4の発現誘導は顕著に抑制されたことから、正常脂肪前駆細胞における新たなp53下流遺伝子であることが明らかとなった。次に、脂肪細胞においてDPYSL4をノックダウンさせるとATP産生・酸素消費量は低下し、TCAサイクルマーカーであるNAD+/NADH比の増加を認め、TCAサイクルに抑制的に作用した。癌細胞であるH1299細胞においてLentivirusを用いてDPYSL4の過剰発現させると、ATP産生・酸素消費量は増加し、NAD+/NADH比の低下を生じ、逆にshRNAによるノックダウンでは、ATP産生・酸素消費量が低下することから癌細胞においてもDPYSL4はTCA cycleに対して抑制的に作用した。DPYSL4は正常細胞である脂肪細胞のみならず、癌細胞においても好気的回路を介したエネルギー産生調節機序を有することが示唆された。さらに、DPYSL4の強制発現でコロニー形成は阻害され、マトリジェル癌浸潤能は低下したことから、癌抑制機能を有する可能性が示唆された。以上のことから、DPYSL4はp53下流遺伝子として作用し、癌細胞や脂肪細胞でのエネルギー産生調節を介して、癌と生活習慣病に共通した分子病態の形成に関わっている可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次世代型シークエンサーを用いたRNAシークエンスやChIPシークエンスなどの新しい先端技術解析を展開している。その結果、細胞内代謝制御における転写因子p53の新知見を見出すことができた。さらに、生化学的な手法を用いた細胞内代謝に関わる機能解析を行うことに加えて、糖尿病・肥満などの生活習慣病とがんにおける分子病態との関わりを明らかにしつつあり、計画通り順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
DPYSL4のエネルギー代謝調節機能・癌抑制機能・細胞骨格制御機能がin vitroとin vivoにおける浸潤/転移抑制作用にどのように関わっているかを明らかにするために、(1)DPYSL4の機能ドメインのdeletion mutantのエネルギー産生・浸潤・転移におよぼす影響の検討、(2)バイオインフォマティクスを用いたGene Ontology Termにおけるpathway解析を行う。また、マウスを用いて癌浸潤・転移モデルをたち上げ、in vivoでの癌増殖能、転移能について検討する。
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