2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J03919
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大溪 正浩 名古屋大学, 大学院・多元数理科学研究科, 特別研究員PD
|
Keywords | 2項式辺イデアル / 射影分解 / ヒルベルト級数 |
Research Abstract |
本年度は完全多部グラフの2項式辺イデアルに関する研究に従事した.2項式辺イデアルとはグラフの各辺に対応する2項式(サイズ2×nの変数行列の小行列式)で生成されるイデアルのことで,その研究はHerzog-日比を中心とする研究グループと報告者によって独立に始められた.応募者の現在の主たる研究課題は2項式辺イデアルの射影分解を構成することである.本年度は,射影分解の帰結として得られるヒルベルト級数を計算することを具体的課題とした.一般のグラフの場合には複雑過ぎて生産的とは思われないため,まず特殊なクラスのグラフとして完全多部グラフの場合に絞って研究を行った.報告者は過去に,このクラスの2項式辺イデアルについて,コーエン・マコーレー性の特徴づけ,剰余環のF純性の証明,形式的冪と通常の冪の一致を証明している,この場合の利点としては,素因子が外在的に記述できること,非自明な素因子がすべて変数で生成されることがあげられる.前者の事実とイデアルの準素分解によって,各々の素因子の情報から全体の情報を導き出すことが可能となる.また後者によって,ヒルベルト級数の議論は単項式イデアルの場合,すなわちスタンレイ・ライスナー環の理論に帰着される.一般の場合には素因子をすべて外在的に記述することはできていないし,素因子の生成系には変数と2小行列式が混在するのが通常である.これらはいずれもグラフの特殊性を反映する条件であり,これらの条件を緩和することが今後さらに求められる.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
主として本年度の研究対象が2項式辺イデアルに限られたことが挙げられる.申請者が現状最も重視している課題に取り組んだ結果であり,結果として申請書の目的の達成度は高くはないものの,研究活動そのものは順調に進展している.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の課題として[1]2項式辺イデアルの素因子に関するヒルベルト級数の議論を深めること,特に[2]然るべき数学的帰納法が適用できる状況を見出すことが挙げられる.またこの結果を一般化させる方向として、[3]完全多部グラフを含む良いグラフのクラスを見出し,これまでに得られた研究成果を一般化することを課題とする.これらの課題は極めて具体的段階に進んでおり,今後も進展が期待される.
|