2011 Fiscal Year Annual Research Report
ナノスケール流動場を用いた生体高分子計測法の開発と数理モデルの構築
Project/Area Number |
11J03935
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
上原 聡司 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 生体高分子 / バイオナノ流体デバイス / DNAシーケンサ / ナノ微細加工 / 電気浸透流 / 電気泳動 |
Research Abstract |
当研究室の先行研究として,ナノ流路を用いた一次元拘束下において,λDNAの電気泳動による流動がバルク中と比べて制限されることが明らかになった.この成果をさらに深く理解するために,ナノ流路内でのλDNA流動理論モデルの構築に取り組んだ.ナノ流路中のλDNAをポーラス状の物体であると仮定し,そのλDNAの界面と壁面との隙間に発生する速度分布からλDNAが受けるせん断力を見積もった.観察されたλDNAから,その運動を定常運動であると仮定しλDNAに加わる力の釣り合いを考えてλDNAの速度を導出した.導出した流速は330~650nmの深さのナノ流路において実験値と良い一致を示したので,本モデルは新たなナノバイオデバイス創成において有意であると言える.この成果はASME Journal of Fluids Engineering(米国機械学会流体工学雑誌)に掲載された.さらに構築された理論モデルをより微小な実験系に適応するために発展させた.加えて,Euler記述的手法を用いてナノ流路内におけるλDNA流動の新しい理論モデルを提案した.この成果についてはISIN2012(International Symposium on Innovative Nanobiodevice 2012,Nagoya)およびInternational Workshop on Micro/Nano-Engineering 2011(Kyoto)において発表された.また,注目している次世代DNAシーケンサは,単一の生体高分子をナノギャップ電極を有するナノボア間に通過させ,その際のトンネル電流を計測し,塩基配列を読み取るものである.この実用化を考慮すると,DNA-分子レベルでの伸張実現とその現象解明は必須である.そのため,DNA伸長現象の蛍光可視化観察が不可欠であるので,これについてはDNAの片側末端を金プレートに固定するための生化学的手法および流路内に金プレートを有するナノ流路とDNAを伸張させるために内部液体を駆動する実験系の開発を行った.これらの手法の開発により,微小流路内での界面導電現象と,DNA-分子に着目した新たな計測法が確立できると期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
新たなナノデバイスとして,電極間部断面が50×60nmのナノギャップ電極を有するナノ流路内におけるDNAの流動に着目した.これまで用いていたナノ流路は鉛直方向のみがナノスケールであり一次元的な拘束であったが,今回は水平方向にも拘束力が働く流路内でのDNA流動現象に適応できるように,理論モデルを発展させた.このLagrange記述によるモデルに加えて,Euler記述を用いて,実験結果をサポートする新たな理論モデルを構築した.これは次世代DNAシーケンサの開発に向けて大きな前進であると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
提案されている次世代DNAシーケンサへの実用化を考慮すると,一重鎖DNAの流動特性解明は必須である.よって今後,これまで培ってきた蛍光可視化計測技術を応用して,一重鎖DNAのナノメータスケールの構造内における振る舞いを明らかにする.これまで行ってきた二重鎖DNAは塩基対間に蛍光分子をインターカレートすることが可能であったが,一重鎖DNAにおいてはそれが困難である.よって,蛍光染料分子を一重鎖DNA分子に結合し,その流動を計測する.またそのDNAに適した新たなナノ流路を構築する.理論的アプローチにおいても構築した二重鎖DNAの理論モデルをKhun長などの物性値の異なる一重鎖DNAに適応できるように発展させる.
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Research Products
(6 results)