2011 Fiscal Year Annual Research Report
高周期典型元素を有する新規な交差共役系化合物の合成と性質解明
Project/Area Number |
11J03938
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三宅 秀明 京都大学, 化学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 典型元素 / 交差共役 / ラジアレン / π電子共役系 / 低配位リン化合物 / 有機色素 / トリアフルベン / 多重結合 |
Research Abstract |
本研究は、高周期典型元素を含む交差共役系化合物を合成し、その性質を解明することを目的としている。本年度は、環状の交差共役系化合物であるラジアレンのリン類縁体の合成および性質解明を行った。まず、最小のラジアレンである[3]ラジアレンの環外原子を全てリン原子に置き換えた化合物、トリホスファ[3]ラジアレンを目的化合物とした。そこで、対応するホスファトリアフルベンを前駆体として設計した。テトラクロロシクロプロペンに対した。かさ高い2,4,6-トリ(t-ブチル)フェニル基を有する一級ホスフィンと、塩基としてジイソプロピルアニリンを作用させたところ、前駆体として設計したホスファトリアフルベンが得られた。これに対し、それをトリエチルアミン存在下、ヨウ素を加えて酸化することで、目的のトリホスファ[3]ラジアレンを得ることに成功した。これは[3]ラジアレンのリン類縁体として初めての合成例である。得られた化合物はいずれも空気や水に対して安定だった。合成したトリホスファ[3]ラジアレンは濃い赤紫色をしており、ヘキサン溶液の最長吸収極大波長は526nm(ε=1.92×10^4)であった。この吸収はジホスファブタジエン骨格を有する化合物よりも顕著に長波長側であるため、リン-炭素二重結合の交差共役によって吸収波長が長波長側にシフトすることが明らかとなった。また、炭素骨格の[3]ラジアレンの吸収よりも長波長側にあることから、リンの導入による長波長シフトも明らかになった。合成したトリホスファ[3]ラジアレンの還元電位を測定したところ、E_<1/2>=-1.55V(vs FcH/FcH^+)であり、交差共役によって電子受容能が大きく向上することが明らかとなった。トリホスファラジアレンの分子軌道計算を行い、LUMOレベルが低下することを理論的に解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、未知の含高周期典型元素低配位化合物の合成と性質解明を行うが、このような化合物の合成は一般的に困難であり、高度な実験技術を必要とする。この化合物合成が本研究の最大の鍵であるが、本年度において、未知化合物であった[3]ラジアレンのリン類縁体の合成を達成できたため、研究には一定の成果があったと言える。また、得られた化合物の性質解明も円滑に遂行する事ができ、その特異な性質が明らかとなった。[3]ラジアレンは交差共役系化合物として最も基本的な骨格であるため、その高周期元素類縁体の性質解明は本研究において非常に重要な課題であった。一年でその課題に対して回答を得ることが出来たことから、計画は順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に合成したトリホスファ[3]ラジアレンは安定性が高い上、興味深い光学的・電気化学的性質を示した。しかも、簡便な合成手法を確立することが出来たため、その応用可能性が高まった。今後は機能分子としての応用を視野に入れ、トリホスファ[3]ラジアレンの反応性解明や官能基付与を検討する。有望な誘導体が得られたら、色素増感太陽電池などのデバイス作成を検討する。それと並行して、他の新規化合物の合成に着手する。すなわち、[4]ラジアレンや[5]ラジアレンのリン類縁体や、リン以外の高周期典型元素類縁体の合成を検討する。得られた化合物はNMRやX線結晶構造解析を用いて構造を明らかにし、各種スペクトル解析や電気化学測定によってその性質を明らかにする。
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Research Products
(5 results)