2012 Fiscal Year Annual Research Report
高周期典型元素を有する新規な交差共役系化合物の合成と性質解明
Project/Area Number |
11J03938
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三宅 秀明 京都大学, 化学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 典型元素 / 交差共役 / ラジアレン / π電子共役系 / 低配位リン化合物 / 有機色素 / ジアニオン / 多重結合 |
Research Abstract |
本研究は、高周期典型元素を含む交差共役系化合物を合成し、その性質を解明することを目的としている。昨年度は、環状の交差共役系化合物であるラジアレンのリン類縁体の合成および性質解明を行うことを目的とし、最小のラジアレンである[3]ラジアレンの環外原子を全てリン原子に置き換えた化合物、トリボスファ[3]ラジアレンを合成することに成功した。本年度は、合成したトリホスファ[3]ラジアレンの酸化還元挙動に注目し、特に還元反応の検討を行った。サイクリックボルタンメトリー、微分パルスボルタンメトリー、を用い、詳細に還元電位測定を行ったところ、還元側にE1/2=-1.55V、-2.62V(vsFcH/FcH+)の二段階一電子還元過程が観測された。すなわち、交差共役によって電子受容能が大きく向上し、安定な一電子還元体、二電子還元体が存在しうることが明らかとなった。実際に、金属リチウムを用いた還元反応を行ったところ、対応するジアニオン種を合成・単離することに成功し、その性質・構造を明らかにすることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、未知の含高周期典型元素低配位化合物の合成と性質解明を行うが、このような化合物の合成は一般的に困難であり、高度な実験技術を必要とする。この化合物合成が本研究の最大の鍵であるが、すでに未知化合物であった[3]ラジアレンのリン類縁体の合成を達成できている。さらに今年度は、その還元挙動をより詳細に解明し、その知見に基づき実際の化学還元反応によるジアニオン種の単離および構造解析に成功しており、研究には一定の成果があったと言える。得られた化合物のは、環状π電子系であり、芳香族性についての知見も得ることが出来た。以上、本研究課題に対して十分な成果を得ることが出来ており、計画は1頂調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までに合成したトリホスファ[3]ラジアレンおよびそのジアニオンは興味深い光学的・電気化学的性質を示した。しかも、簡便な合成手法を確立することが出来たため、その応用可能性が高まった。さらに、本年度の研究成果により、トリホスファ[3]ラジアレンの還元は二段階の一電子過程であることが観測されているので、条件次第では、ジアニオンに至る仮定であるアニオンラジカル種の単離も可能であると考えられる。アニオンラジカル種は、その高い反応性のみならず、物性の観点からも興味が持たれる化学種で有り、もしも安定に単離できれば、その多段階還元挙動を利用した機能性物質の観点からの応用の可能性は高い。今後、中性子、アニオンラジカル種、ジアニオン種の構造や性質を詳細に解明し、その性質と機能性分子への展開を検討する。
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