2011 Fiscal Year Annual Research Report
アリ類の長期間にわたる大量の精子貯蔵メカニズムとその進化の解明
Project/Area Number |
11J03964
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
後藤 彩子 琉球大学, 農学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 社会性昆虫 / 受精嚢 / 精子貯蔵 |
Research Abstract |
本研究では、アリ科女王が長期間(多くの種で10年以上)、大量の精子を貯蔵できるメカニズムを解明することを目的としている。長期間の精子貯蔵には、精子の代謝抑制が重要であると考えられる。本研究では、精子の代謝に大きな影響をおよぼす精子の運動に着目し、精子を長期間貯蔵する種では、精子貯蔵の場である受精嚢リザーバー内の精子の運動が抑制されているという仮説を立てた。過去の文献により、精子貯蔵期間が数日~数週間と考えられるキイロショウジョウバエではリザーバー内精子が運動しており、精子を2~5年貯蔵するセイヨウミツバチでは受精嚢内精子は運動していないということが報告されていた。本研究では、精子貯蔵期間が数ヶ月と考えられるツチバチ科では運動し、精子貯蔵期間が約1年のコガタスズメバチと5年以上のアリ科で運動していないことが明らかとなった。今後、多くの種で追加調査をする必要があるが、これらのことから、長期間の精子貯蔵に受精嚢内の精子を不動化させることが重要であることが示唆された。また、キイロシリアゲアリ(Crematogaster osakensis)女王を材料にし、受精嚢内精子の運動がどのように抑制されているのかを調べた結果、浸透圧が高い溶液中で精子の運動を抑制することが可能であり、イオンの種類やpHは影響しないことが示された。また、精子不動化以外にも、受精嚢が精子に与えている影響を網羅的に調べるために、受精嚢で高く発現している遺伝子をRNA-seq法により網羅的に調べた。そのために、RNAを抽出し、サンプル調整をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を開始するにあたり、実験に最適な種の選定ができ、飼育、実験環境を整えることができた。また、微量な組織でも高精度で遺伝子発現を調べられるRNA-seq法を用いることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、受精嚢内の浸透圧を測定し、本実験で得られた結果を検証する予定である。また、どのような溶液により高い浸透圧が維持されているかを調べるために、受精嚢内の糖、イオン、アミノ酸などの濃度を測定し、体液と比較する予定である。受精嚢の網羅的な遺伝子発現に関しては、シークエンサーの結果が出次第、解析をすみやかにすすめるつもりである。
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