2013 Fiscal Year Annual Research Report
アリ類の長期間にわたる大量の精子貯蔵メカニズムとその進化の解明
Project/Area Number |
11J03964
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
後藤 彩子 琉球大学, 農学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 社会性昆虫 / 受精嚢 / 精子貯蔵 |
Research Abstract |
本研究では、アリ科女王が長期間(多くの種で10年以上)、大量の精子を貯蔵できるメカニズムを解明することを目的としており、メスの精子貯蔵器官である受精嚢の機能に着目している。 昨年度の研究により、精子貯蔵期間が数日から数か月の昆虫種では、受精嚢内で精子は運動していたが、1年以上である社会性膜翅目昆虫では運動していないことが明らかとなった。これらのことから、長期間の精子貯蔵に受精嚢内の精子を不動化させることが重要であることが示唆された。アリ科女王の受精嚢内精子の運動に影響する因子を調べるために、キイロシリアゲアリ(Crematogaster osakensts)女王の貯蔵精子をさまざまな溶液にさらし、その運動を観察した。その結果、イオンの種類やpHは運動に影響しなかったが、高浸透圧溶液では精子の動きが制御された。しかし、受精嚢内液の浸透圧を測定したところ、予想より高くないという結果が得られた。現在は、これらの結果を踏まえ、これらの他の精子運動制御に寄与する因子の候補を探っている。具体的には、粘度が高く、精子の運動を物理的に制御する物質や、精子不動化タンパクなどを候補として考えている。 また、昨年度までに、次世代シークエンサーを用い、体全体と比較して、受精嚢で多く発現している遺伝子を網羅的に探索した。今年度は、受精嚢で高く発現している遺伝子のうち、108遺伝子の発現部位をin situ hybridizationにより調べたところ、これらの遺伝子が確かに受精嚢で発現が多いことを確認した。ほとんどの遺伝子が受精嚢だけではなく、卵巣や中腸などの活動的な器官でも発現していたが、その中でも、受精嚢のみで発現している遺伝子を11個発見することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
精子の運動制御に関わる因子として、当初浸透圧が候補として挙げられた。しかし、微量の液体の浸透圧を測定できる装置を保有する研究室を探すまでに時間がかかってしまい、測定結果も予想とは異なるものだった。 一方、受精嚢で高発現する遺伝子の発現部位の同定は、おおむね順調に進展したと評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
精子の運動制御に関わる因子として、浸透圧以外の候補を探っている。次世代シークエンサーの解析により、受精嚢でコラーゲン遺伝子が高発現しでいることが分かっており、その精子運動への寄与を探る予定である。 また、受精嚢特異的発現遺伝子の機能を解析するために、RNA干渉法や、精子培養系を確立し、これらのタンパク質との共培養実験をおこない、精子貯蔵に関与する遺伝子を特定する予定である。
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Research Products
(2 results)