2011 Fiscal Year Annual Research Report
微細加工技術に基づくグルタミン酸イオンチャネルセンサに関する研究
Project/Area Number |
11J03968
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大嶋 梓 東北大学, 大学院・医工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | イオンチャネル / チップ分析 / 脂質二分子膜 / 半導体加工 |
Research Abstract |
本研究では,半導体微細加工と,バイオナノ薄膜である脂質二分子膜とを結合させることにより,二分子膜系の最大の問題であったその機械的脆弱性の問題を解決し,チャネルタンパク質に基づくバイオチップやセンサを構築することを目的としている.シリコン微細加工に基づく安定化脂質二分子膜では,シリコン由来の大きな電気容量のためノイズ電流と過渡電流が大きいという問題があったが,熱酸化膜(SiO_2層)およびテフロン層を用いた絶縁層被覆を行いシリコンチップの電気容量を下げることにより,ノイズ電流幅を1-2 pA(peak-to-peak),過渡電流を1ms以下にまで下げることに成功した(Micro and Nanosystems,2012,4,2-7.).これは,生体チャネルの単一チャネル電流記録に適した電気特性と機械的安定性とを兼ね備えた人工脂質二分子膜系の構築に成功したことを意味する.次の段階は,構築した安定化脂質二分子膜系へ効率良くイオンチャネルタンパク質を埋め込むことであるが,この試行錯誤には十分な量のチャネルタンパク質が必要となるため,創薬に重要な2種のイオンチャネルを対象に大量発現細胞系の構築について検討した.遺伝子組み換え技術により目的イオンチャネルを細胞に発現させ、本研究室に細胞培養系の立ち上げとタンパク質の抽出を行い,今年度は活性を保持した状態での抽出法の構築まで進めることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
東日本大震災によりクリーンルーム内の微細加工関連の装置が損傷し,12月に復旧するまでシリコンチップの作製が出来なくなってしまった.また,チャネル電流を記録する微小電流測定装置も1台全損し,記録装置不足の状態で1年間過ごさざるを得なかった.この他,震災により実験室の供給水の圧力が低下し,研究室内での超純水の調製が不可能になるなど研究環境が大きなダメージを受け,結果的に今年度の大半を震災復旧に費やすことになったため,研究の進捗は当初の予定よりも遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
安定化脂質二分子膜系の構築と,イオンチャネルタンパク質の発現系の構築まで進捗したため,今後は,構築した膜系への効率のよいチャネル包埋法の創案を目指す.当初,この研究課題は平成23年度から着手する予定であったが,震災の復旧に予想以上の時間と労力を取られてしまったため,次年度の課題として残ってしまった.
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