2011 Fiscal Year Annual Research Report
エマルションガンマ線望遠鏡によって実現する宇宙線加速天体のモルフォロジー解析
Project/Area Number |
11J04013
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
六條 宏紀 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 特別研究員(DC2) (00725814)
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Keywords | ガンマ線天文学 / 宇宙線 / 原子核乾板 / 気球実験 |
Research Abstract |
最新の原子核乾板および解析技術をガンマ線観測器へ応用することで、現存するGeVガンマ線観測機器よりも1桁高い解像度でガンマ線源を撮像することが可能となる。本研究は、高分解能「エマルションガンマ線望遠鏡」を開発し、大面積検出器を気球に搭載して長時間フライトを実施し、現在「未同定」とされている謎のガンマ線天体や、宇宙線加速が示唆される超新星残骸等の精密観測を実現することを目的としている。 2011年6月、馳北海道・大樹航空宇宙実験場より小型の検出器を搭載した気球を打ち上げ、大気トップでのテクニカル観測を実施した。本実験によって以下の成果を得る事が出来た。 ・タイムスタンプ技術の確立 エマルション望遠鏡実現へ向けた課題の1つが、原子核乾板で捉えたガンマ線イベントに到来時刻を秒以下の精度で付与するテクニックの確立であった。我々が親規に考案した「多段シフター」機構は、原子核乾板からなる複数のユニットを観測中に独立にスライドさせることで、再構成した飛跡に意図的にズレを発生させ、そのズレ量と組み合わせから通過時刻を知ることが出来る仕組みである。地上での開発・試験を経た多段シフターは、上空で正帯に動作し、高高度においても0.1秒の精度でタイムスタンプが行えることを実証した。この成果については、現在欧文誌に投稿中である。 ・ガンマ線到来方向の天球座標へのマッピング 原子核乾板内で反応したガンマ線イベントに時刻情報を与え、その時刻に置ける望遠鏡の姿勢をスターカメラにより決定し、ガンマ線の到来方向を銀河座標上にマッピングする事が出来た。ガンマ線天体の精密観測へ向けて確立すべき一連の行程を上空で実現出来る事を実証した。 ・バックグラウンドの実測 レベル高度20~35km地点での荷電粒子フラックスおよび大気ガンマ線フラックスの残留大気圧依存性を実測し、過去の測定と矛盾の無い結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
気球実験の採択が予定より半年ほど遅れたものの、解析は順調に進めることが出来た。次期フライトでは、データサイズが1桁以上増えることになるが、それを想定した解析ツールの開発を現段階から取り組み、環境を整備することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
既知のガンマ線天体の検出、および望遠鏡の撮像能力を実証するための次期フライトの準備に専念する。使用する原子核乾板の量が1桁以上増えることになるが、基本的な要素は小型機から大きな変更は無い。マンパワーが必要となるが、共同研究者である神戸大の大学院生らと共にシフトを組み、実験の準備を進めていく。
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Research Products
(6 results)