2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J04016
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
横山 慶子 北海道大学, 大学院・工学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 集団ダイナミクス / スポーツ / 非線形ダイナミクス / 培養神経細胞 |
Research Abstract |
個が集まり集団となったとき、「個々」の能力の総和では想像できないような力が「集団」として創発する。こうした集団の創発に潜むダイナミクス(規則性)を明らかにすることが本研究の目的である。平成23年度は、三者ダイナミクスとチームダイナミクスに関する2つの研究成果が得られた。 まず、三者ダイナミクスについては、サッカーの3対1ボール保持課題を行う三者の連携が、対称性のホップ分岐理論によって予測される同期パターンと一致すること、パターンの違いが技能レベルに対応することを明らかにした。さらに初級者は、二者の動きに同時に気づくことができない傾向であったことから、三者を物理的に繋ぐ練習道具を開発し、その効果を検証した。この道具は、他者への「気づき」をスポーツを通じて与えられる可能性を含むため、教育現場への還元が期待できる研究成果といえる。 また、チームダイナミクスについては、サッカーのパス回しをネットワーク理論に基づいて解析した結果、ハブと呼ばれる中心的な選手が存在し、なおかつ、その選手は試合経過によって切り替わる傾向があることを明らかにした。これは、2つの競合する少集団の行動戦略というように、様々な集団に応用できる研究成果といえる。上記2つの研究は、査読付き学術論文および新聞・インターネット等のマスメディアに掲載されたことから、研究意義が社会的に認められたものと考えられる。 また一方で、スポーツというヒトの行動レベルでの集団ダイナミクスを解析する方法論を先駆的に開発するために、受け入れ先の研究室で既に研究実績めあるミクロスケールの脳神経細胞集団を対象とした培養実験系を援用し、集団ダイナミクスの解析法の開発およびその普遍性の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、集団の創発に潜むダイナミクス(規則性)を明らかにすることを研究目的とした。その結果、対称性のホップ分岐理論やネットワーク理論で説明されている規則性が、スポーツにおける三者およびチームによる集団行動においても確認できることを示した。これらの結果はインパクトの高い学術論文に掲載され、当初の計画で想定していた以上に学術的に高い評価を得たと考えている。またさらに、これらの研究成果とは別に、脳の神経細胞集団というミクロスケールの観点から集団ダイナミクスの解析方法の検討に時間を費やせたことは、計画以上の進展とみて間違いない。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は、集団の創発に潜むダイナミクス(規則性)を、スポーツを通じてのみ、明らかにすることを目的としていた。しかしながら、マクロスケールのヒト集団の解析は、データ取得や集合変数の抽出、さらには理論的解析などの複雑な問題が山積している。こうした問題を解決するための手段として、ミクロスケールでの集団現象で得られた先行知見をマクロへと拡張して解析を行うことが多く、実際に本年度で得られた研究成果は、こうした観点によるものであった。このことから、計測および解析手法が比較的に確立されているミクロスケールの現象を視野に入れて集団ダイナミクスの解析を進めることが、ヒト集団のダイナミクス解析法を考案する手助けになると考え、研究計画に脳の神経細胞集団のダイナミクス解析を加えた。これは、解析法の開発のみならず、脳からヒトの行動という、マルチスケールに渡るヒトのダイナミクス解明に繋がる研究計画であると確信している。
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Research Products
(7 results)