2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J04016
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
横山 慶子 北海道大学, 大学院・工学研究院, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 集団ダイナミクス / 脳 / 培養神経細胞集団 / 同期バースト / リターンマップ |
Research Abstract |
個が集まり集団となったとき、「個」の能力の総和では想像できないような力が「集団」として創発する。こうした集団の創発現象に潜むダイナミクス(規則性)を明らかにすることが、本研究の目的である。 平成24年度では、生命現象のなかでも特に洗練された集団ともいえる脳の神経細胞集団を題材として、脳の神経細胞の集団ダイナミクスの検証を行った。ラット胎児大脳皮質由来の神経細胞を8×8の多電極アレイ上で約2か月に渡って分散培養し、数日おきに全電極の活動電位を測定したところ、ネットワークの形成とともに複数の神経細胞の高頻度発火の同期、すなわち同期バーストが確認された。同期バースト発生の時間間隔と、同期を担う複数の神経細胞のうちのひとつの神経細胞の発火間隔をリターンマップに当てはめたところ、両者に類似する傾向が確認された。これは、1神経細胞と多神経細胞集団、すなわち「個」と「集団」に共通する時間ダイナミクスが潜むことを示唆している。この結果は慎重に検証すべきものの、ヒト行動などのその他の集団現象に一般化できる可能性を含んでおり、広義な意味での集団ダイナミクスの理解に繋がる重要な結果と考えられる。また、神経細胞の集団的な振る舞いとして観察された同期バーストは、生体内の知覚や運動、学習、記憶などの高次機能に関わることが知られていることから、本研究の成果は集団ダイナミクスのみならず脳機能の新たな理解に繋がるものと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究目的は、脳の培養神経細胞集団のダイナミクスの評価方法をリターンマップによって開発し(目的1)、外部入力を与えた際の集団ダイナミクスを検証すること(目的2)であった。目的1は達成できたものの、目的2に関しては現在、予備実験と試験的解析を進めている段階である。目的2の進展が遅れている理由のひとつは、目的1で用いたデータの検証結果が予想以上に意義があったため、その解析を重点的に進めたためである。もうひとつの理由は、研究を進めていくなかで、神経細胞の発火パターンのダイナミクスをより詳細に検討すべきと考え、新たな実験系で得られたデータ解析を進めたためである。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題はスポーツを行うヒトの集団を題材に集団ダイナミクスを検討する予定であり、初年度において十分な研究成果が得られた。それに伴い本年度以降は、集団ダイナミクス解明をより発展的に進めるために、生命現象のなかでも特に洗練された集団現象ともいえる脳の神経細胞集団を題材とした検討を進めることとした。来年度以降も引き続き同様の題材を用いることとする。特に、本年度に開発したリターンマップ分析を用いた時間ダイナミクスの検証を、1細胞と集団のどちらに関しても検討し、論文投稿を目指す。また同時に、外部入力を加えた際の集団の振る舞いについても検討を進める予定である。
|
Research Products
(6 results)