2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J04066
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大友 涼子 北海道大学, 大学院・工学院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 物質移動 / 透過流動 / 多孔質体 / 形状効果 / 重力不安定 / 流体力学的相互作用 |
Research Abstract |
本研究は多孔質体中の物質移動における界面の形状効果を解明するため,粒子層への銅の析出実験を行い,形状変化を伴う粒子層端部近傍における物質移動特性について調べることを目的としている.本実験では準2次元の析出実験セルの下部に粒子層,上部に銅板を設置し,内部を硫酸銅水溶液で満たしたのち,電位差を与えることによって粒子層に銅を析出させる.これまでは溶液中のイオンの移動や粒子層表面での反応における界面の形状効果を,異なる形状を有する粒子層への析出挙動を比較することでのみ推察してきたが,当該年度ではイオンの挙動を可視化するという新たな手法を取り入れた.銅イオンの吸光ピークである近赤外線を析出実験セルの裏側から照射すると,セル内部の銅イオンは局所的なイオン濃度に対応して非一様な吸光度を示す.このような局所的な光の濃淡を赤外線カメラを用いて撮影することで,イオン挙動を直接観察することが可能となった.結果として,垂直に設置されたセルの内部では析出反応により重力不安定(重力と逆方向の濃度勾配)が生じ,対流を引き起こしているということが明らかとなった.重力不安定による対流が支配的となる多孔質体中の物質移動に関しては,近年数多くの研究が行われつつあるが,本研究ではさらに,粒子層端部の形状,すなわち反応が起こる固-液界面形状が対流スケールに大きな影響を与えるという結果を得ることができた. また,多孔質体中の透過流動に関しては,過去に行ってきた粒子層中の透過特性評価のための理論を多分散系に拡張した.より現実に近い条件を考慮し,端部を有する有限の粒子層について,内部でさまざまな粒径の粒子が層状に分布するといった非一様な構造に着目して解析を行った.理論計算結果から,多分散粒子層中の透過流動における端効果(end effect)および,粒径分布や内部構造による形状効果を定量的に評価することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に挑戦した銅イオン挙動の可視化により,複雑な形状を有する粒子層への非一様な析出堺面の選択的成長)過程における物質移動について,これまで解明できなかった現象を定量的に解析することが可能となった.また透過流動に関しても多分散系および非一様な内部構造といった,より現実的な系での解析を行うことができた。したがって,多孔質体中の移動特性に及ぼす形状効果を定量的に評価するという本研究の目的に対して,おおむね順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
可視化手法の確立に時間を要したことから,研究計画で予定していた析出実験の流動場への拡張が進展しておらず,研究計画を変更する必要がある.今後は流動場における物質移動と界面形状の関係に焦点を絞り,これまでに得られた静止場における実験結果との比較も併せて解析を行っていく予定である.銅イオン挙動の可視化を実験に取り入れたことによって,流動場に拡張した場合にも,より明確かつ定量的な結果が期待できる.また,これまでに得られた結果および今後得られる結果に関して,論文投稿および学会発表といった研究発表の機会を増やすことも念頭に入れた上で計画を立て,研究を進めていきたいと考えている.
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