2012 Fiscal Year Annual Research Report
一次元ナノ構造の非平衡キャリア緩和におけるラッティンジャー液体・CDWゆらぎ効果
Project/Area Number |
11J04088
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
小野 頌太 横浜国立大学, 工学研究院, 研究教員
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Keywords | キャリア緩和 / フォノン / カーボン物質 / エネルギーギャップ / 密度汎関数理論 / 半減期 / Seebeck係数 / 超格子 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に構築したギャップ形成物質の光励起キャリア緩和理論を実験結果に適用し、理論の妥当性を検証した。エネルギーギャップが形成する系の転移温度直下での緩和時間の発散・非発散現象は銅酸化物高温超伝導体の発見以降注目されてきたが、その実験結果の理論解釈に関する意見の一致はなされていなかった。本研究では、電子系のエネルギーが縦波フォノン系だけでなく横波フォノン系へも散逸する効果を考慮したキャリア緩和理論を構築し、カーボン物質(擬一次元C_<60>重合体、K_3C_<60>、Rb_3C_<60>)、および銅酸化物高温超伝導体の実験結果に適用した。その結果、理論が実験データをよく再現するが明らかになった。本理論は、現存するキャリア緩和理論の中で最も精度よく実験を再現するため、今後当該分野における標準的理論になり得る。 さらに、カーボンナノ物質の電子物性研究を発展させることで、物性物理学と量子化学および熱電変換工学にまたがる横断的研究も行った。放射性元素である^7Beをカーボンナノチューブ(CNT)に内包させたときの^7Be原子核位置での電子密度を、密度汎関数理論に基づき計算した。その結果、原子核位置での電子密度が増大することが明らかになった。本研究により、^7Beの半減期がCNTに内包される前に比べて1.5%短くなるという興味深い現象が実験に先立って予言された。さらに、周期ポテンシャルが印加されたグラフェン超格子系のSeebeck係数を、モデルハミルトニアンを用いて評価した。その結果、ある特徴的なポテンシャル振幅を印加したときに、Seebeck係数の大きさが極大となることが明らかになった。この現象は、電気伝導率のFermiエネルギー依存性がSeebeck係数の大きさと強い相関を持つことに起因して生じるためであることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本申請課題の研究目的は、光励起キャリア緩和機構を解明し、ギャップ形成物質のキャリア緩和現象を統一的に理解することであった。当年度の研究では、昨年度に構築した理論をカーボン物質や銅酸化物高温超電導体に適用し、理論と実験とがよく一致することを確かめた。さらに、カーボン物質の電子物性研究を通じて、本研究が物性物理学と量子化学および熱電変換工学にまたがる横断的研究へ発展したため、(1)を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、固体やナノ構造体で発現する新奇な非平衡現象の理論的解明・予測を行う。この目的を達成するためには、電子と格子の自由度を考慮に入れた断熱近似を超えた大規模な第一原理計算を行う必要がある。そのために、第一原理分子動力学法、時間依存密度汎関数理論、GW近似に基づく物性評価手法の開発、および計算速度の向上を目的としたアルゴリズム開発を行う。
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Research Products
(13 results)