2011 Fiscal Year Annual Research Report
南朝仏教地域性研究―写本の作成、流布、受容の考察を通して―
Project/Area Number |
11J04118
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村田 みお 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 南朝 / 写本 / 写経 / 功徳 / 経巻崇拝 / 金経 / 血経 |
Research Abstract |
本研究は、南朝仏教の持つ地域的特色を、実践修行及び中国伝統思想との関連という基礎的視野の下、写本(手書きによる巻子本)という書物の形態が作成、流布、受容された過程を総体的に考察することによって明らかにするものである。この研究計画に基づき、本年度は、研究全体の基礎となる幅広い資料収集を中心としつつ、思想的側面からの研究を行った。その中で、まずは第一段階として写本の作成、流布、受容の過程全体に関する思想的概括を行った。この研究によって、漢訳経典の中で写経が功徳を積むための重要な修行と位置づけられ、書写された経巻が供養・崇拝の対象とされたこと、六朝隋唐期における仏教経典の写本は、単なる物質に止まらない聖性を備えた存在と捉えられていたこと、その聖性の存しうる根拠、聖性を附与するためのメカニズムを明らかにした。続いて、このような全体的概括を踏まえ、同様に思想的側面から、写経の中でも些か特殊な形態である金経(金泥によって書写した経巻)と血経(血液によって書写した経巻)の二種類についての考察を行った。それらのルーツとなった経典中の出典と、実際に作成された際に与えられた思想的意味を明らかにした上で、金経については特に南朝における継承に注意を払い、血経については出典の重要性に関する判断基準の修正案を提示することを試みた。以上の研究によって、従来の個別事例的写本研究とは異なる、伝世資料による写本研究の手法を打ち立てた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は主として今後の研究の基盤となる基礎的な資料の収集を着実に進め、かつ計画に沿った研究成果の発表をも行い、非常に順調であると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は本年度に作り上げた研究基盤をもとに、思想的側面からより文献学的側面を重視した研究へとシフトしていくことを予定している。このようにして、研究全体を通して思想史研究の手法と文献学研究の手法を統合することが大きな意義を持つと考える。
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Research Products
(3 results)