2011 Fiscal Year Annual Research Report
多精受精モデル、鳥類の新規卵子活性化機構の探索とクローン鳥類創出への挑戦
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11J04152
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
水島 秀成 静岡大学, 農学部, 日本学術振興会特別研究員(PD)
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Keywords | 顕微授精 / ウズラ / 精子由来卵子活性化因子 / Ca^<2+>濃度測定 / phospholipase Cζ / IP_3 / Ca^<2+>オシレーション / モノクローナル抗体ライブラリー |
Research Abstract |
顕微授精(ICSI)法および体外培養によって得られたウズラ胚は、原条が観察される胚ステージ6までの育成が最高であり、未だ個体孵化には至っていない。多精子侵入が関与する卵子活性化を体外で再現できていないことが最大の要因である。そこで鳥類の精子由来卵子活性化因子(SOAF)を網羅的に解析することを目的に、ウズラ卵細胞質内のCa^<2+>濃度測定法を確立した。単一射出精子を注入したウズラ卵子において、細胞質内Ca^<2+>の増加は観察されなかった。その後の発生率も16%と非常に低く、卵割ステージのVIIで全ての卵子が発生を停止した。一方、SOAFの一つとして既に単離されているphospholipase Cζ(PLCζ)cRNAまたはPLCζの代謝産物であるIP3を単独投与すると、注入部位から一過性のCa^<2+>増加が観察され、生殖盤にのみCa^<2+>波が伝搬した。またPLCζcRNAまたはIP3を顕微授精した卵子は、それぞれ50、82%と高い発生率を示し、両群ともに胚ステージ6まで進行した。次いで、精子抽出物(SE)の単独投与あるいはSEとIP3の同時投与を行うと、一過性のCa^<2+>増加反応が観察された後に、哺乳類と全く異なった連続的なCa^<2+>オシレーションが観察された。IP3、SEとともにICSIしたウズラ卵子では、80%の発生率を示しただけでなく、発生が孵化直前(胚ステージ45)まで進行した。SEのCa^<2+>オシレーションに対するこの効果は、レクチンで処理することで中和されることが分かり、これらの分子をLC-MS/MSで解析した。38個の遺伝子がヒットし、現在卵子活性化にのみ効果のある遺伝子を選抜中である。さらにSEに対するモノクローナル抗体ライブラリーを作成するとともに、この内SEの発生に対する効果を中和する2つのライブラリーを得た。これらのライブラリーからSOAFを認識する抗体を選抜していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、ウズラの卵細胞質内Ca^<2+>濃度の計測技術を確立することができ、ウズラの受精に、そしてその後の発生に必要なCa^<2+>パターンが区分化することができたため。さらにそれらに関与する新規なSOAFもある程度選別することに成功しているほか、ウズラICSI胚の発生ステージも大幅に改良できたからである。
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Strategy for Future Research Activity |
既に選別されている2つのモノクローナル抗体ライブラリーから、またLC-MS/MS解析から選別された遺伝子の双方からウズラ卵細胞質内Ca^<2+>オシレーションを誘起する新規SOAFを同定する。またこのSOAFを利用して、ウズラICSI卵の孵化育成を行う予定である。さらにこのSOAF抗体を作製した後、Ca^<2+>オシレーションの抑制実験を行う。また平行して、核移植ウズラ卵の培養法を確立する目的で、新規SOAFの有用性も検討する予定である。
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Research Products
(21 results)