2011 Fiscal Year Annual Research Report
イカ類における視覚的コミュニケーションを介した群れの維持機構の解明
Project/Area Number |
11J04156
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
杉本 親要 琉球大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | アオリイカ / 群れ行動 / 視覚特性 / 社会的順位 / ソーシャルネットワーク / コミュニケーション |
Research Abstract |
本研究は、アオリイカの資源動態を理解することを最終目標に、本種の視覚によるコミュニケーションと、これを介した群れの維持機構について、飼育観察と野外観察から明らかにすることを目的とした。目的達成のために次の3項目を実施した。(I)群れの隊形維持およびコミュニケーションに関わるアオリイカの視覚能力の解明、(II)アオリイカの群れにおける隊形特性の解明、(III)アオリイカの視覚的コミュニケーションを介した群れ機能の解明。各研究項目を以下に要約する。 (I) :アオリイカの視覚特性を調べるため、卵から育成した本種の眼球を経時的に採集した。また、行動実験の視覚刺激として使用する、アオリイカ、アオリイカの捕食者および餌生物の映像を撮影した。 (II) :アオリイカの群れの隊形について調べるため、本種の群れ行動を飼育下および沖縄島沿岸域において観察した。 その結果、本種の群れの隊形は、定位中の3つの群れ隊形と移動中の2つの群れ隊形に分類できた。これに関連し、鯨類、鳥類および魚類の群れ隊形について文献調査し、比較動物学的検証のための行動カタログを作成した。 (III) :アオリイカの群れの機能について調べるため、本種の群れ行動を飼育下で観察し、群れを構成する個体同士の関係性と個々の役割、時間経過に伴う変動を、ソーシャルネットワーク分析により分析した。また、研究項目(II)と対応させ、群れ内で個体がとる位置とソーシャルネットワーク上での位置との関連を調べた。この中で、他個体と多くの繋がりをもつハブ個体や、他個体との繋がりがほとんどない周辺個体を群れの中から移出入させる操作も行った。その結果、群れのソーシャルネットワークに時間経過および個体の出入りというイベントに応じた動態が認められた。また、ハブ個体は群れの中心付近に定位している場合が多く、周辺個体は群れの辺縁部に定位していることも示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アオリイカの飼育実験が順調に進み、本種の眼球標本や次年度に実施予定の行動実験に用いる映像サンプルを十分に収集できた。また、本種の群れ行動の野外調査についても順調に実施でき、映像データを十分得ることができ、論文として取り纏める段階に至ることができた。以上から、研究は当初の計画通りおおむね順調に進展していると評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
アオリイカ網膜の組織学的観察、視覚特性および体色変化についての行動実験を実施する。また、本種の群れ内におけるネットワークと群れ隊形との関係を基に、群れを構成する個体の体色変化を追跡することで、視覚的コミュニケーションが群れの維持にどのように機能しているのか行動実験を行う。さらに、平成23年度の成果を論文として取り纏め、国際学術雑誌に投稿する。
|