2011 Fiscal Year Annual Research Report
MORBはどこでどのように形成されるのか? : オマーンオフィオライトからの貢献
Project/Area Number |
11J04217
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
秋澤 紀克 金沢大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | MORB(中央海嶺玄武岩) / ハルツバーガイト / ダナイト / モホ遷移帯 / マグマ・岩石相互作用 / Crの動き / 熱水 / クロミタイト |
Research Abstract |
モホ遷移帯付近(浅い部分)でのMORBの振る舞い モホ遷移帯(地殻-マントル境界直下)は,MORB(中央海嶺玄武岩=海洋地殻を形成するマグマ)を,マントルから排出するのに寄与すると考えられる重要な場所である.しかし,その重要性にも関わらずその精査は行われてこなかった.そこで,かつての地殻-マントル部が世界一の露出・保存状態を誇る"オマーンオフィオライト"で調査を行い,精密に(2-3mスケール)サンプリング・分析をした.この研究により,モホ遷移帯付近でMORBは,マグマ-ハルツバーガイト(最上部マントルの岩石)相互反応と,単斜輝石・斜長石(はんれい岩)の晶出により形成されたということが分かり,比較的浅いところ(モホ遷移帯付近)でのMORBの振る舞いが詳細に明らかにされた.その成果を記した論文が,Contributions to Mineralogy and Petrologyに受理された. 熱水下でCrは移動できるのか? 上記の研究と共にモホ遷移帯付近で発見された"不思議できれいな岩石"の研究も行ったので,以下でその研究状況も報告する.熱水下ではクロム(Cr)は動きにくい元素の一つであると言われている.ところが,クロムが熱水下で動いているといることを明らかに示唆している岩石をモホ遷移帯直上(地殻最下部)で発見した.その岩石ほ熱水下で形成されたにも関わらず,クロム成分が多い鉱物を含んでおり,クロムが明らかに外部から運ばれた形跡が確認された.モホ遷移帯付近の詳細な現地調査と,数μmスケールでの分析を行うことで,クロムはマントル中のクロミタイト(鉱石として用いられるほどクロムを多く含む岩石)由来であり,熱水がカーボネイトを含んでいたことによりクロムを移動させた,と言うことを明らかにした.その研究成果の一部は,既に論文として発表済みであり,クロムの動きに関して,より詳細にまとめた論文の執筆準備中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記したように,浅部でのMORBの形成過程に関する研究成果を出すことに成功した.深い部分での研究も進行中で,その成果も日本地球惑星科学連合(国内学会,口頭発表,2012年5月24日),とAsia Oceania Geoscienes Society(国際学会,2012年8月,詳細日程は未定)で発表予定である,以上から,「研究の目的」の達成に向かって,研究が順調であるといえる.それに加えて,熱水下でのクロムの動きに関する研究成果も出すことに成功した.この1年間の研究成果が十分で,計画以上であったと言えるであろう.
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Strategy for Future Research Activity |
モホ遷移轄以深(深い部分)でのMORBの振る舞い "初生的な"MORB(より深いところでのMORB)がどのような振る舞いをしてモホ遷移帯にたどり着くのか?」を明らかにする研究は,MORBの形成過程全体を解明する上で必要不可欠である.そこで,2011年12月22日-2012年1月18日に現地調査に行き,モホ遷移帯以深の調査を広域的に行い,分析をした.その結果,マントル部で所々見られるダナイト(ほぼ,かんらん石から成る岩石)が,初生的なMORBの情報を保存している可能性があることが分かった.今後,この研究を進めていくことで,MORB形成過程の"全体"を解明ができると期待できる.
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Research Products
(5 results)