2012 Fiscal Year Annual Research Report
地球温暖化に伴って北進する熱帯性魚類寄生カイアシ類の特定と防除のための基礎研究
Project/Area Number |
11J04311
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
上野 大輔 琉球大学, 理学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 寄生性カイアシ類 / 地球温暖化 / 水産被害 / 未記載種 / Lernaeenicus ramosus / 琉球列島 / ウオジラミ科 / ペンネラ科 |
Research Abstract |
琉球列島に分布する有害寄生性カイアシ類を調べ、地球温暖化の影響で日本列島へ北進し水産被害を招く種の推定を行うのが、本研究の一番大きな目的である。一昨年度だけでは琉球列島の魚類寄生性カイアシ類調査が十分ではないと判断し、昨年度は引き続き同海域の調査に加え、黒潮に乗り有害寄生性カイアシ類の進入可能性がある鹿児島県と高知県沿岸域で寄生性カイアシ類調査を実施した。結果、30種を超える寄生性カイアシ類を採集し、未記載種の記載を行っている。また小型ハタ類について、一昨年に西表島から種子島まで、琉球列島の南北の島々から採集した標本の調査を引き続き行った結果、南北で寄生性カイアシ類相が異なった。有害な寄生性カイアシ類Lernaeenicus ramosusは、琉球列島全域において寄生が確認されたが、特に沖縄島以南において多かった。本種は、様々な状況証拠から、今まさに分布を北へ進めている可能性が高いとみて、宿主魚の選択性や適正水温について引き続き研究をおこなっている。 その他、シンガポールにおいて寄生性カイアシ類相調査を行った。調査船によるトローリングおよび潜水調査などから、70種以上の寄生性カイアシ類を発見した。また、パプアニューギニアでも調査を行い、主に潜水調査から、約80種の寄生性カイアシ類を採集した。得られた寄生性カイアシ類について、種のリストを作成し、必要に応じて種記載を行っている。これら2件の学術調査からは、病害性が高いウオジラミ科やペンネラ科が多く採集された。これらは分布域を拡大し、大規模な水産被害を招く恐れがある。引き続き、熱帯域における寄生性カイアシ類相の解明を続けたい。 昨年度の研究成果の一部は、論文として発表した。また、初年度の成果の一部も、論文として出版した。さらに、国内外の研究者から種判別を依頼された寄生性カイアシ類についても、一部出版済みである。 つ
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究第一のハードルは、今まさに北進している、あるいは今後北進する熱帯性寄生カイアシ類を見つけ出すことである。昨年度までの研究から、北進している疑いが強いカイアシ類としてペンネラ科カイアシ類2種、今後侵入可能性がある寄生性カイアシ類としてエラジラミ科1種が発見され、予測以上に北進は当たり前に起こっている現状が浮き彫りになってきた。また、得られた寄生性カイアシの総数が、本研究が順調に進んでいることを物語っていると考える。これらの研究から、昨年度は11編の研究論文を第1著者としてまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は計画以上の成果が上がったと考えているが、琉球列島および熱帯域における寄生性カイアシ類の多様性が、想像以上に高いということが明らかになりつつあることが、大きな誤算であったといえる。野外調査を行い、寄生性カイアシ類を探せば探した分だけ、未知の種類の発見につながり、またそのうち何種かは有害性が非常に高い。本研究の目標である、進入源の寄生性カイアシ類相解明から日本列島で被害を生む種の推定を行うためには、進入源の寄生性カイアシ類相について、徹底的に明らかにする必要がある。特別研究員採用期間最後となる今年度は、より精力的に寄生性カイアシ類相の解明を行っていく必要がある。
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