2012 Fiscal Year Annual Research Report
気液砕波乱流中の力学機構に基づく大気‐海洋間気体輸送フラックスモデル
Project/Area Number |
11J04354
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
新井田 靖郎 北海道大学, 大学院・工学院, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 気体輸送 / 砕波 / 気泡 |
Research Abstract |
沿岸環境評価の主要な指標の一つである海中溶存酸素濃度は,砕波に伴うエアレーションに大きく左右される(Farmerら,1993).外洋では主として風速をパラメータとするマクロな気体輸送モデル(Wanninkhofら,1993)によって海中溶存酸素濃度の予測が行われているが,沿岸域ではその支配因子である混入気泡量や気泡サイズ分布は砕波ジェットの着水過程に依存する他,溶解した酸素を拡散し,ソースである気泡自体をも移流させる砕波乱流は砕波規模,砕波形態に応じて輸送形態を大きく変化させる.既存のバルクモデルではこれらのプロセスを記述できず,短期的・局所的な溶存酸素濃度変動の定量的予測は不可能である.そこで本研究では豊かな生態系を有する沿岸域を対象に,気液砕波乱流中の力学機構に基づいた新たな気体輸送フラックスモデルの構築を行うことを目的としている.本年度は,砕波イベントを通して発生する個々の気泡から溶解する酸素をインテグレートするマイクロスケールからのアプローチとして,気泡サイズスペクトルを入力値とし,サイズごとの個々の酸素輸送フラックスを評価するモデルを開発した.本モデルを,砕波ジェットを模擬した鉛直ジェットによって発生させた混入気泡のサイズスペクトル分布にあてはめて溶存酸素濃度時間変化を計算し実測値と比較し,モデルの砕波帯への適用可能性について検討した.モデルによる計算結果は計測結果をおおむね再現しており,複雑な気液流れ中の気体輸送に対して矛盾無く適用可能である事が確認された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終目標とする砕波イベントを通じた大気一海洋間気体輸送フラックスモデルに不可欠な個々の気泡からの酸素輸送を評価するモデルを構築したため.
|
Strategy for Future Research Activity |
砕波イベント中の気体輸送は気泡のサイズ分布に大きく依存する.砕波時の気泡発生のメカニズムについて更なる知見が必要であると考えられる.
|