2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J04355
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
菅 恵嗣 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 生体膜干渉 / 無細胞タンパク質合成 / リポソーム / 緑色蛍光タンパク質(GFP) / RNA |
Research Abstract |
本研究では,生体膜(リポソーム)による直接的な生体分子の機能制御すなわち"生体膜干渉"の概念に基づき,生体膜による生体分子機能制御メカニズムを解明する事を目的とする. 研究1年目では,まず翻訳の中核を担うRNA分子とリポソームとの相互作用メカニズムについて検討し,生体膜(リポソーム)上でのRNA翻訳メカニズムの解明を目指した.モデルRNAとしてtRNAを用いて,各種分光解析(蛍光分光法,赤外分光法,紫外可視分光法,円二色性分光法)を駆使して,tRNAのリン酸骨格および塩基部位がリポソームと相互作用し,脂質分子と水素結合を形成している可能性を示した.さらに,リポソーム膜上ではtRNAおよびmRNAが構造変化し,無細胞GFP発現系における翻訳効率に影響を及ぼすことを明らかにした.以上の知見はNucleic Acids Research誌に掲載済みである(Nucl.Acids Res.,39(20),pp.8891-8900(2011)).これら研究成果を進捗段階に応じてまとめ,研究発表を行なってきた(国際会議3件,国内シンポジウム4件).水素結合の可能性を確かめるため顕微ラマン分光解析も実施している.また,リポソーム相状態に応じてRNA相互作用が異なることを明らかにしている.相状態の異なる正電荷リポソームを用いてmRNAとの相互作用挙動を解析し,mRNA高次構造ならびに翻訳活性に及ぼす影響について研究発表を行い(国内シンポジウム1件),現在研究成果を論文にまとめている段階である.さらに,水性二相分配法を用いてRNA表面特性の解析し,学会発表(国内シンポジウム2件,国際会議1件)を行った.これら研究成果を論文にまとめている段階である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の当初目標である「リポソーム-RNA相互作用メカニズム」が明らかとなり,脂質組成に応じた遺伝子発現制御("生体膜干渉")の可能性が示された.また,赤外分光法を用いてリポソーム膜上におけるRNA構造の分子論的解析に成功した.それゆえ,"生体膜干渉"の基本的な制御機構の解明については当初目標を達成できたと言える.また,リポソームならびにRNA分子の表面特性解析についても一定の成果を得た.以上より,本年度はおおむね研究計画通りの実験を行い,"生体膜干渉"現象に関する確かな研究成果を得られた.
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に研究計画の変更はない.正電荷リポソームをモデル系として,脂質膜のドメイン構造が遺伝子の構造に及ぼす分子論的な効果をより詳細に検討する予定である.そのため,遺伝子の構造を脂質分子などに干渉される事なく分析が可能な,赤外分光法や顕微ラマン分光法を駆使する.これらの手法による遺伝子構造の解析は報告例がほとんどないため,新しい切り口による知見が得られると期待される.
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