Research Abstract |
本研究では,モデル生体膜であるリボソーム膜を「場」とする分子の振舞いに着目し,脂質膜上における生体高分子十本鎖RAA,ポリペプチド,他)の認識機構ならびに高次構造・機能制御について取り組んだ.特に,リボソーム膜は一本鎖RNA分子と選択的に相互作用する事を明らかにし,モデル生体膜が直接的にRNA機能を制御する"生体膜干渉"という概念を見出した(cf.RNA干渉). まず,生体高分子を認識するための「場」のデザインとして,種々のリン脂質およびコレステロールより構成されるリボソーム膜を調製し,その物理化学的な膜特性解析を行った.各種分光解析(蛍光分光,赤外分光,ラマン分光)により,脂質膜の相状態およびミクロ相分離挙動について検討を行い,粒径100nmのリボソーム膜上に10-30Åのナノドメインが形成されることを明らかにした.以上の結果は投稿論文2報に掲載済みである(Langmuir,29(15),4830-4838(2013);Solv.Extr.Res.Dev.Jpn.,20,1-13(2013).また,これら知見について各学会にて発表を行い,専門家らとの意見交換を行った(国内学会計3件). 次に,表層デザインリポソーム膜を利用して生体高分子の認識機構について検討を行った結果,ナノドメイン性リボソーム膜は複数の相互作用(静電相互作用,疎水性相互作用,水素結合,表層環境の変化(脱水和),表面構造の合致)により一本鎖RNA分子を高選択的に膜表層へ誘導する事を明らかにした.さらにバルク環境とは異なる膜表層環境において,anA分子の高次構造が制御され,RNA機能(mRNA翻訳,Hammerhead Ribozyme自己切断)が制御可能である事を明らかにした.1RNA分子の表面特性および高次構造の解析手法を確立(円二色性分光,ラマン分光)し,脂質膜が生体高分子認識のための「場」として活用できる事を明らかにした.以上の結果は投稿論文に掲載済みである(Int'l.J.Bio1.Sci.,8(8),1188-1196(2012);Langmuir,29(6),1899-1907(2013);膜,37(6),264-269(2012).また,これら知見について各学会にて発表を行い,専門家らとの意見交換を行った(国内学会計5件).
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