2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J04365
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浜向 直 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ハミルトン・ヤコビ方程式 / 粘性解 / 不連続方程式 / 最適制御理論 / アイコナール方程式 |
Research Abstract |
私の平成23年度の主な研究は、1:不連続ソース項を持つハミルトン・ヤコビ方程式、2:距離空間上のアイコナール方程式、の2つである。以下にその内容と成果を述べる。 1:ステップ源のある結晶成長の問題に現れる、不連続なソース項を持つハミルトン・ヤコビ方程式について研究した。典型的な方程式は1点での不連続性を持つが、従来の粘性解の意味では解の一意性が成り立たない。そこで従来の粘性解の概念を拡張することにより、適切な解の概念「包粘性解」を定義した。典型的な結果として、ハミルトニアンが強圧的な場合に、任意の有界一様連続な初期値に対して包粘性解が一意的に存在することを示せた。ハミルトニアンが非強圧的な場合は、一般に包粘性解の一意性は期待できないが、一意性が成り立つための十分条件を与えた。また最適制御理論との関係として、ある種の制御可能性条件の下で、不連続なランニングコストを持つ値関数が、包粘性解の表現公式を与えることを証明した。これらの成果は当初の研究目的に沿った満足のいくものである。当研究で扱った1点での不連続性を持つ方程式に対して、適切な解の概念を与える先行研究は無かった。今回の研究において適切な解を構成した点は新しく、意義がある。 2:一般の距離空間の開集合上におけるアイコナール方程式に対して粘性解の概念を導入した。そして対応する最適制御問題を考えることによって、境界値問題の一意的な解を構成した。アイコナール方程式とは、未知関数の勾配の長さが既知の関数で与えられる方程式であり、例えば成長する結晶が占める領域と時刻との関係を記述する。従来の研究では、ネットワークなどの特別な距離空間上における方程式に対する解の概念は知られていたが、当研究では全く一般の距離空間という設定でアイコナール方程式の一意的な解を構成している点が新しい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、不連続項を含むハミルトン・ヤコビ方程式を研究することを目的としていた。そして、ステップ源を持つ結晶成長の問題において、粘性解の理論に基づいてこれまでに無かった新しい解の概念を導入することで時間大域的な一意解が構成でき、また最適制御理論との関係も明らかにできた点において、順調な進展があったと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も結晶成長の問題に現れる様々なハミルトン・ヤコビ方程式に対して、微分方程式の粘性解の理論を用いて、時間大域的な一意解を構成することを目標に研究を進める。具体的には、本年度の研究では時間発展形の1階の方程式を主に扱ったが、今後は曲率の効果を考えたときの結晶成長の問題に現れる2階の方程式も研究していきたい。また本年度得られた成果の拡張として、例えば距離空間上のアイコナール方程式の理論に対して、不連続ソース項を加える、方程式の形を一般化する、時間発展形を考えるなどの問題が研究課題として考えられる。
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Research Products
(6 results)